巻頭言

アイボランティアネットワーク静岡会長 増本 旭

「EVN静岡の今後」

 明けましておめでとうございます。
 今年こそは。今年こそは安心して生きられる社会をと、願っていますが、経済環境も国際情勢も、また人間関係までも、なんとなく危うさを禁じ得ないこの頃です。
 EVN静岡も、今年11月には発足して23年目を迎えます。
 視覚障害ボランティアのネットワークを作ろうと考えた20数年前、音訳完成図書や点訳完成図書の情報は地域に限定されていました。そのため、当時はボランティアの時間的資源を労費する重複製作や、読みたい旬を味わえない、長い待ち時間が発生するなどの問題が生じていました。また、他地域の完成図書情報を得たとしても、具体的な存在場所の検索や図書の発受手続きなどいくつかの問題があり、必ずしも必要な時に入手できるとは限りませんでした。そこで、窓口を一本化すること。そのためには県内で活動する視覚障碍者対象のボランティアを1つのネットでつなぐ連合体を設立することが必要でした。
 そしてその「ネライ」は、様々な図書ニーズに迅速に応えられるようにすること。それはひいては「ユーザーに、当て(頼りに)になる」アイボランティアのネットワーク」となるものでした。
 そして発足して20余年、その多くのネライは会員の皆さんや支援者の協力によって実現し、活動して参りました。
 一方で、この20数年、本会の活動の主軸をなす「視覚障碍者の図書環境の充実」は、デジタル技術の進歩などを背景に、発足当時と比べ飛躍的に拡充発展しました。
 また視覚障碍者の外出活動についても、その後の公的制度の拡充などにより、誘導ボランティア(ガイドボランティア)に対するニーズパターンが変化しました。
 こうした視覚障害当事者の支援環境の変化に加え、ボランティア思考の環境も、この20年大きく変わってしまいました。
 その一つの表れは、アイボランティアの後継者不足です。これには社会環境としての、ボランティア思考の多様化、子育て終了後の生き方の多様化など様々な因子が考えられます。
 こうした視覚障碍者の情報アクセス環境の充実や、アイボランティア思考の変化などの現状を考えると、本会の存続意義としての役割は、ほぼ果たし終えたのではないかとも言えます。
 しかし、2年前に開催した20周年記念大会の席上をはじめ、いろいろな機会に、聞こえてくるのは「活動の灯は消さないでほしい」と言う、ユーザーからの声です。
 とは言っても、会員の高齢化などによるマンパワー不足の現状を考えると、従来の活動を、そのまま今後も継続していくと言うことには限界が来ていることも事実です。
 また、アクセスの利便性などについても、本会だけでの活動継続は、必ずしもユーザーにとってベストな選択ではないと考えます。そこで、一昨年業務内容を拡充し新たなスタートをきった、旧静岡県点字図書館(現 静岡県視覚障害者情報支援センター)に、本会の活動内容を移行することが最良の方策との観点から、両者間での話し合いを昨年から始めています。
 ご存知のように本会の活動は、情報誌の発行から、各グループ間の情報共有や、グループ間の調整、研修会や、講習会、完成図書の所蔵、利用者とのコーディネート、外出支援などなど多岐に渡るため以降のための準備には相当の期間が必要となります。
 今後も両者で話し合いを進めながら、移行可能な部分から一つずつ支援センターに業務を渡していく予定です。
 両者の話し合い経過については、本紙や代議員総会などを通してお知らせして参りますが、質問や、ご意見、ご希望などありましたら、いつでも役員まで連絡下さい。なお、JBOS(全国視覚障碍者外出支援連絡会)の窓口につきましては、すでに本年1月に支援センターに移行が完了しています。
 今後、静岡県内の視覚障碍者が、県外の誘導ボランティアを依頼したい場合は、本会ではなく、上記情報支援センターの方に問い合わせをお願い致します。
 最後になりましたが、今年は全自動運転やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、VR(virtual reality:仮想現実)、MR(mixed reality:複合現実)など、AI(artificial intelligence:人工知能)をベースにした技術が更に大きく進歩することが予想されます。
 数十年後には人工知能は人の知能を追い越すとも言われています。ますます便利で楽しい生活が実現しそうですが、一方で予想もできない大きな問題が発生しないかとの不安もあります。
 願わくば、こうした時代にあって、人は、限度なき欲望に走ることなく、真の崇高な動物として社会環境を守っていってほしいと祈るばかりです。
 2017年が皆様にとって、穏やかで平和な年になりますよう願っています。


ネットワークだより一覧へ戻る
トップページへ戻る