視覚障害者パソコンサポーター講習会を終えて

                                                                                                           Q:貴方  D:増本

                                                                          ネットワーク便り23(2000年7月発行)から引用
 
 Q:  貴方、D:  増本
 Q: 視覚障害者のためのパソコンサポーター講習会ご苦労さまでした。
 D: 最近、視障者からのパソコンサポートのニーズが大変高まってきています。それは、パソコンが晴眼者以上に視障者の生活にとって、欠くことのできない道具となってきているからにほかなりません。そこで、一人でも多くの方にパソコンを使えるようになってほしいという願いから、第1回目の視障者のためのパソコンサポートボランティア講習会を開催したわけです。
 Q: すでに視障者のためのインターネットアクセス環境を設定するボランティアネットワークがあると聞いたことがありますが、今回の内容もそのようなものなのですか。
 D: 全く違います。視障者がパソコンを使う目的は様々です。封書や葉書での手紙を出したい。郵便物を読みたい。回覧板などのお知らせを読みたい。カルテ管理をしたい。通帳など自分で確認したい。等々、人それぞれです。インターネットの利用はその一部に過ぎません。インターネット接続のサポートだけでは全く不十分です。
 Q: それは、日ごろからサポート活動に飛び回っているDさんならではの発言ですね。
 D: パソコンを始めたいと思っている視障者はどんどん増えています。でも、全く初めてという人には、何をやったらいいのか皆目見当がつきません。
 Q.そういえば私も最初はそうでした。まずは何を購入したらよいのか。何を勉強したら良いのか。
 D: 視障者の場合は、更に大変です。画面を見ないで使えるのか。視障者に適しているパソコンにはどんなものがあるのか。自分のニーズに合ったソフトは何なのか。更に、操作などはどうして覚えたらよいのか等々。
 Q: となると、パソコンサポーターは幅広い知識が必要になりますね。
 D: 視障者の様々なニーズに適切に対応するにはより高い資質が要求されます。でも、それを個人に期待するのは大変難しいことです。そこで、多くのサポーターパワーを結集しネットワークを組むことが大事になってくるわけです。今回は4日間という短期講習会でしたので、活動内容の一部分しか紹介や体験ができませんでしたが、サポーターの必要性や資質要件、実践方法など少しは分かっていただけたと思っています。
 Q: 4日間の講習内容について概略を紹介して下さい。
 D: 実はパソコンの知識以前に、サポーターが備えていなければならないことがあります。
P33
 Q: パソコンの知識以外というと何ですか。
 D: それは視障者の持つ特性の理解ということです。
 Q: 例えばどんなことですか。
 D: キーボードを触らせる場合でも、よく指1本でキーの位置を確認させていることがあります。あれはいけません。これでは結局、そのキーがどのへんにあるのか分かっていませんので、後で一人でやろうとしてもなかなかそのキーが探せなくなってしまいます。これはミスタッチによるトラブルの発生にもつながりかねません。目的のキーが全体のどの位置にあるのかをしっかり確認させてから、各キーに触れさせなければいけません。
 Q: 全体を把握してから、部分の確認にうつるわけですね。
 D: 勤務先でも、ややもするとこうした光景が見受けられます。視障者の特性を理解するということは、常に視障者の視点で考えるということであり、視障者にかかわる人全てが備えていなければならない最低要件なのです。
 Q: 心しておきたいと思います。
 D: このへんをしっかり押さえておかないと、適切でかつ質の高いサポートは実践できなくなります。さて講習内容ですが、「D式視障者指導法」に基づいて、まず視障者がパソコンを前にしたシミュレーションから始めました。
 Q: サポーター役となった方はテクニックに四苦八苦したようですね。
 D: 画面が見えないという環境のなかでパソコンを操作することがいかに大変なことか、また、そうした状況化でどのようにサポートしていくことが最も望ましいかを分かっていただけたと思います。こうした体験がより適切なサポート活動の展開につながっていくことになるのです。
 Q: 講習会ではアプリケーションなども紹介されたのですか。
 D: DOS系のソフト、ハード、そして、Windows環境でのソフト等について触れさせていただきました。実際にインストール作業も少し行いました。最終日にはヨメールを使った活字読み上げの体験や音声によるホームページの検索なども体験していただきました。
 Q: トラブル対策についてはどうでしたか。
 D: これがサポーターにとって最も重要な活動であり、また、高い技術レベルが要求される部分でもあります。講習では、今までの事例について参考となるものを少し話させていただきましたが、これは実際の場に立ち会って経験を重ねるしかありませんね。
 Q: アクセス支援グループでは既にかなりの実践例をお持ちのようですので、対策事例をデータ化しておくと皆さんに参考になりますね。
 D: 受講者からも、そうした意見が出されていましたので、今後検討していくつもりです。
 Q: 視障者がWindowsを操作している時に音声が出なくなってしまうという例は多いのですか。
 D: 結構ありますね。
 Q: そうした時はどうするのですか。
P34
 D: すぐに駆け付けることは今まで不可能でしたので(今後は可能なこともありますが)、電話口で次の操作を指示しています。この例は「WIN」キーの有るNEC9821系の場合です。
 まず、「WIN」キーを押し(スタートメニューの表示)、次に「P」キーを押す(PC−Talker利用の場合)または下向きカーソル1回押す(95・98Reader利用の場合)、そしてリターン(スクリーンリーダーの再起動)。ただし、これはソフト環境や視障者のレベルにもよりますので、全ての事例にあてはまるものではありません。これで音声が開始すればしめたものです。NGなら、次に移ります。
 「WIN」キーを押し、カーソルを一つ上に上げさせて(Windowsの終了の選択)リターンする。少し待ってもう一度リターンする。これでWindowsが終了しなければ、「ESC」キーを何度か押し、次に「ALT」+「F4」を何度か実行する(現在起動しているアプリケーションの終了)。そして、もう一度、「WIN」から操作をやり直す。これでも終了しない時は「ALT」+「CTRL」+「DEL」を2回押しシャットダウンを実行する。それでも終らなければ電源ボタンを押し続ける(強制終了)。その後、再起動させて正規終了させる。電源が落ちるまでは絶対にコンセントを抜かせないこと。
 Q: その方法は私たちにも大いに参考になりますね。
 D: これは音声が止まったときばかりではなく、何らかの原因でパソコンの操作が不可能となってしまった時(フリーズ)でも同じ対応です。あわててコンセントを抜くようなことは絶対してはいけません。コンセントを抜いたためパソコンの心臓部であるマザーボードを壊してしまった例も数例聞いていますからくれぐれもご注意を。
 Q: 誌面が無くなりましたのでこれで終りとします。有難うございました。

「このコーナーに関するお問い合せは下記のいずれかでお願いします。」
 視覚障害者情報機器アクセス支援グループ
 代表  増本 旭
 Tel・FAX 0538-43-2952
 携帯 090-9176-3880
 NIFTY Serve ID RXM05721



                  トップページへ | 前ページへ |Dさんの索引へ