視覚障害者情報機器アクセス支援グループについて
                  ネットワークだより 25号(2001年3月)掲載
                                                       Q:貴方  D:増本

Q:今回の巻頭言でも触れられていますように、視覚障害者の情報リテラシーがますます重要な課題となってきているようですね。こうした状況のなか、Dさんは以前からこの問題を改善するため様々な活動を展開していますね。今回は、いつも本欄の末尾に書かれている「視覚障害者情報機器アクセス支援グループ」の活動についてお聞きし、今後のアイボランティア活動を考える際の参考にさせていただきたいと思います。まず発足の時期を教えてください。
D:私たちの会は「視覚障害者趣味の会」として平成5年の5月に発足しました。当初はダンス部、英会話部、生活情報部の三部門があり、各々で活動を行っていました。
Q:ダンスや英会話もやっていたんですか。
D:視覚障害者にとって大変意義のある活動でしたが、諸般の事情で現在は休部となっています。活動環境が整えばまた復活させたい部門です。
Q:では現在の名称になったのはいつ頃ですか。
D:名称が変わったということではなく、名称が二つあると考えてください。ダンス部と英会話部が休部となるなかで、生活情報部はその活動の多くがパソコンの学習に傾いていきました。会員も徐々に増えてくるなかで、活動にふさわしい名称、また、支援を求める際も一見して分かる名称ということで平成10年にこの長たらしい名称を併記することとなりました。
Q:確かに「趣味の会」では財政面での支援は受けにくいかもしれませんね。
D:でも、長すぎる名称に会員からは略称を望む声が多く出されていました。そこで今年から略称を「CATS(キャッツ Computer Assistance for The Sight-challenged)」とすることとし、これを機に新たな活動にも着手することになりました。
Q:前置き的な内容が長くなりましたが、ここでCATSの考え方を教えてください。
D:基本理念は情報機器を生活の道具として使える視覚障害者を一人でも多く増やしたいということです。パソコンは見たことも触ったこともない人、パソコンを難しいと思っている人、OA機器の操作は苦手という人、そんな視覚障害者こそがCATSの対象者です。こうした人たちを情報機器の世界に招き入れ、日々の生活を便利で楽しいものにしていって欲しいと思っているのです。超初心者大歓迎のCATSです。
Q:となると、活動の内容も幅広いのではないでしょうか。
D:あらゆる側面からのサポートを実践しています。具体的には購入相談、設置、セットアップ、操作指導、講習会、マニュアル作成、トラブル対応、情報提供などなど非常に幅広い活動となっています。
Q:いずれをとっても大切な活動ですね。
D:最初は月1回の講習会の開催だけでした。しかし、超初心者にとってはどんなことができるのか、どこで教えてくれるのか、機器はどこで購入したらよいのか、どの機器を購入するのが良いのかなどなど最初から困ってしまいます。そこでCATSでは、綿密な相談から対応が始まります。
Q:手紙を書きたい人、本を読みたい人、インターネットをやりたい人、パソコンの勉強をしたい人などなど、いろんな人がいるでしょうからね。
D:その通りです。個々のニーズ、目的意識の高さ、知識や技術レベルの高さなど、様々な側面から検討してから実践に入ります。決してすぐパソコンを購入させるようなことはしません。場合によっては1年くらい後になることもあります。
Q:すぐに買いたい人も多いんじゃないでしょうか。
D:もちろん状況によってはすぐ購入してもらうこともよくあります。でも、いくら安くなったといっても10万円くらいの出費になります。購入しても途中でやめたり、あまり使わなかったりでは高い買い物になってしまいます。あくまでも相手の立場に立った適切なアドバイスをしなければなりません。
Q:一昔前のパソコンから始める人もいると聞きましたが。
D:私たちの会では古いパソコンを導入期のマシンとして使い回しスタイルで活用しています。今ではほとんど使われなくなったFDによるAOKワープロ(すでに生産完了している視覚障害者用ワープロソフト)も私たちの会では今だ健在です。
Q:あれは初心者には使い易いソフトでしたね。
D:これによりパソコンのキーボードに慣れ、「私にもできそう」と自信を付けさせ、「パソコンっておもしろそう」と、興味を高めていきます。
Q:ということは、ひょっとしたらMS−DOS(こちらも今ではすっかり姿を消したパソコンのシステム)も健在ですか。
D:もちろんです。Windowsを操作するにしてもDOSの知識があるとないとではその理解に大きな差が生じてきます。でも、だれもがMS−DOSを勉強するわけではありません。例えばヨメール(活字読み上げソフト)の操作を覚えたいという人にはまずそれだけを練習してもらいます。
Q:個々のニーズへの対応ですね。
D:相談のなかで何をしたいのかが明確になった場合はそこから始めます。いきなりインターネットから始める人だっています。自分がやって見たいことをまず覚えてもらえば、できたときの喜びはひとしおのものがあります。そうした喜びや自信が次のステップへとつながり、他のことにもチャレンジする力となっていきます。
Q:事例を紹介してください。
D:1年ほど前に入会された70才台の方はヨメールからスタートし、マイワード(視覚障害者用ワープロ)、そしてアドボイス(宛名書きソフト)ヘと進みました。今年の年賀状はパソコンで書いたものが届きました。近々インターネットも始めることになっています。また、AOKから始めた50才台の女性は、ベース(点訳ソフト)を覚えた後、Windowsへ移行しました。今ではいろいろなソフトを使いこなし生活を楽しんでおられます。昨年暮れからはEメールも開始し更に世界が広がりつつあるようです。
Q:そうした世界に導くためにはどのような形でサポートがなされているんでしょうか。
D:前述したようにその形は様々です。必要とするサポートは全て実践しています。
Q:それだけサポートの幅が広いと活動も大変ですね。
D:最近はサポーターとして協力してくれる方も徐々に増えてきていますので大変助かっています。何しろ会員は静岡県内を始め島根、岐阜、長野、埼玉、神奈川など他県にも広がりつつありますからね。
Q:最近は盲聾者へのサポートもしているようですね。
D:現在は3名の盲聾者の方をサポートしています。パソコンは盲聾者にとって視覚障害者以上に重要な情報機器であることを痛感しています。パソコンを使うことで盲聾者が独力で情報の受発信が可能となり社会参加への可能性が飛躍的に拡大していきます。
Q:盲聾者へのパソコンサポートについては次号でうかがうことにして、パソコンボランティア活動を実践する際に備えなければならない資質を1、2教えてください。
D:サポートにあたっては絶対に自分のレベルで説明しないこと。相手の見え方を十分に考慮すること。晴眼者の視点でサポートしないことです。そして、相手との間に信頼関係を確立することです。パソコンのなかには個人情報がたくさん入っています。扱いには慎重なうえにも慎重を課すことが絶対必要です。
Q:途中ですが誌面がなくなりましたのでこの続きは次回にうかがいます。最後にCATSへの問い合せは下記と同じでよろしいでしょうか。
D:結構です。ただし電話は19時から22時までにお願いします。
Q:どうも有難うございました。

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視覚障害者情報機器アクセス支援グループ  増本 旭
Tel/FAX 0538-43-2952  携帯 090-9176-3880  NIFTY Serve ID RXM05721


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