視覚障害者のパソコンサポート
                          ネットワーク便り 28号(2002年3月)に掲載

                                                   Q:貴方、D:増本

 Q:前号はこの欄は休載でしたのでDさんとは久しぶりになりますが、かなりお忙しいようですね。
 D:森前総理が提案したIT5ヵ年計画によるIT講習会が今年3月までということで全国各地で開催されています。私もその影響を受けて何かと忙しくなっていました。
 Q:Dさんがいつも言われる「一人でも多くの視覚障害者がパソコンを生活の道具として使えるようになってほしい」という願いが実現しつつあるんですか。
 D:最近、市町村レベルで障害者へのパソコン講習会が徐々に実施されはじめておりうれしく思います。
 Q:視覚障害者向けの講習会も開かれているんですか。
 D:障害者のなかでも視覚障害者に対する講習会となると設備の問題や指導者の問題など条件整備が進まないため開けない現状も多いようです。
 Q:視覚障害者用のソフトは結構高いですからね。
 D:でもそれ以前に関係者の認識不足や無理解も結構大きいんです。
 Q:視覚障害者がパソコンを使っているというとビックリする人もいますからね。
 D:ある町で障害者向けのパソコン講習会が開かれるということで、その町のAさん(視覚障害者)が受講を申し込んだところ「視覚障害者は受講できません」と断られたとのことです。
 Q:この手の話は私もよく耳にしますがやはりそうなんですか。
 D:この時、特に私が驚いたのは「視覚障害者にパソコンは使えません。音声で使えるパソコンもまだ開発されていません。」と信じられないような返事が返ってきたということです。しかもこれが講習会の指導者自身の話だということで、あまりの無知にあきれてしまいました。
 Q:そうしたなかで県レベルでの視覚障害者向け講習会が何ヵ所かで開かれましたね。
 D:うれしいことです。今後も是非継続してほしいものです。これもいつも言うことですがパソコンは視覚障害者の生活にとって欠くことのできない道具です。市町村レベルでも視覚障害者へのパソコン講習会を今後積極的に開催してほしいと願っています。
 Q:パソコンを使えば文字も書けるし、本も読める。
 D:さらにインターネットを利用すれば広報や新聞も読めるし、その日放送するテレビ、ラジオ番組の内容なども分かる。料理や病気などで分からないこともすぐ調べられる。電車の時間を調べたり、切符を予約したり等等、生活は便利に楽しくなることうけあいです。
 Q:これらは視覚障害者自身の操作で全て可能なんですか。
 D:もちろん今述べたことは全て可能ですが、インターネット上には視覚障害者には使いにくいところもあります。でも、日々改善されその可能性は無限に広がりつつあります。
 Q:点訳図書や録音図書もインターネットで利用できるようになると聞いたのですが。
 D:点訳図書はパソコン通信時代からネットワークを使って入手することは可能でしたが、最近はインターネットで入手できるようになりました。また、録音図書も昨年から今年にかけて長野や東京、大阪などのユーザーを中心にインターネット利用の実証実験が行われています。
 Q:そうしたシステムが実用化すれば視覚障害者の読書環境は大きく変わることになりますね。
 D:現段階ではアクセス時間の問題やユーザビリティーの問題などクリアしなければならない課題も多いのですが、徐々に改善され近い将来、自宅でいつでも自由に読みたい本が読める時代が来るものと期待しています。
 Q:そうした意味からも今から視覚障害者がパソコンの操作に慣れておくことは大事なことですね。
 D:今年の夏ごろにはCD図書再生器であるプレクストークが録音機能を搭載した新モデルを登場させますが、もし、こうした機器にインターネットへのアクセス機能も付加されるようになれば利用の幅はさらに広がってきます。
 Q:21世紀ますます楽しくなりそうですね。
 D:視覚障害者のなかでパソコンを享受できているのはまだ一部の人にしかすぎません。QOL向上のため、好むと好まざるとに係わらず、一人でも多くの視覚障害者にパソコンに触れて欲しいのです。
 Q:となるとサポート対象者は機械は好きではないとか、パソコンには一度も触れたことがないという、いわゆる(超)初心者となることが考えられますね。
 D:そこが大事なところなんです。
 Q:というと
 D:そうした方々へのサポートですから、それなりにより高いサポートスキルが必要となってきます。
 東京で視覚障害者へのパソコンサポートを仕事としているAさんがこんなことを書いていました。「サポータには視覚障害者を支援するためのプロレベルの指導技術が要求される。自分で少しパソコンがいじれるようになると、おせっかいで視覚障害者へのパソコンサポートをする人がいる。このことで混乱を招く視覚障害者も多い。プロレベルのサポーターは国内では皆無に近い」と。私も全く同感です。
 Q:なかなか手厳しいですね。
 D:Qさんが言うように、「パソコンは全く初めて。しかも機械は嫌い。でも生活に生かせるなら」と腰を上げた視覚障害者にいい加減な知識と不適切なテクニックで指導することは問題です。
 Q:なるほど.なかなか難しい課題ですね。参考のため良くないサポートの例を少し紹介してください。
 D:いろいろありますが、例えば購入段階では点字入力の可否を確認しないで購入させた例。これはキーボードを変更すれば解決しますが。中途半端な知識でセッティングしたためOSとアプリケーションの相性がまずかったり、アプリケーション同志の相性が良くなかった例。指導時としては入力方式をローマ字入力が良いとか、点字入力が良いなどと一つの方式にこだわり選択肢を与えない例。エラー時などに横からマウスで画面を操作し説明なしで直してしまうサポータ。キーの位置説明が不適切なサポーター、「パソコンはやはり難しくて私には出来ない」と印象付けてしまう指導など挙げればキリがないほどあります。
 Q:視覚障害者へのサポートはパソコンだけの知識が高くても駄目なんですね。
 D:そうです。視覚障害者の様々な状況を十分把握していなければ適切なサポートはできません。
 Q:CATSではサポーター講習会も計画しているようですね。
 D:まだ具体的計画はまとまっていませんが県内2、3ヵ所で行いたいと考えています。
 Q:今日は有難うございました。
 このコーナーに関するお問い合せは下記のいずれかへお願いします。
 視覚障害者情報機器アクセス支援グループ(CATS)
 顧問  増本 旭
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