視覚障害者のパソコン環境 Q&A (97年11月)

Q:貴方  D:増本

Q:前号は掲載内容が多かったため、本欄は休載でしたが、その間にデジタル図

書の動きがかなりあったようですね。

D:Plextalkのフィールドテストも終り、7月にはDAISYを中心と

した国際評価会議が東京で開かれました。来春にはデジタル図書再生専用器が市

販される予定です。大きさは、およそB5ぐらいとなりバッテリー駆動も可能に

なるようです。

Q:それは便利ですね。かなり携帯性が出てきましたね。

D:発売が楽しみです。

Q:詳しい話は次号でうかがうとして、今日は視覚障害者のパソコン環境につい

て教えて下さい。最近、利用者からテキストデータを希望されることが多くなり

ましたが、視覚障害者はどのようなパソコンを使っているのですか。特殊なパソ

コンですか。

D:コンピュータ本体は一般のものと同じです(メーカーとしてはNEC系がほ

とんど)。ただ表示画面の確認など、視覚障害者の使い勝手を向上させるため、

いくつかの特別な装置やソフトを付加することになります。

Q:パソコンの表示画面を確認するにはどんな方法がありますか。

D:大きく分けて3つの方法があります。まず1つは音声による方法、次がピン

ディスプレイを使う方法、そしてもう1つが弱視者のための画面を拡大する方法

です。

Q:1つ目の方法である音声によるものから教えて下さい。

D:最初にお話しておきますが視覚障害者が自由にパソコンを利用できる環境は

DOS環境であり、Windows環境はまだあまり使えない状況にあるという

ことを念頭に置いて下さい。では、まず音声化の方法ですがパソコン内臓のスピ

ーカーを使う方法と、外部に音声装置をつける方法とがあります。現在のところ

外付け型が圧倒的に多く、内臓型はWindows画面の確認に最近使われるよ

うになったものです。ただWindows画面の音声化はまだ十分ではありませ

んので、ここしばらくは外部型が続くと思います。(必ずしもWindowsが

内臓スピーカー使用というわけではありませんが、傾向としてということでご理

解下さい)

Q:Windows画面はグラフィックですから音声化は難しいのでしょうね。

D:バリアフリー化が進むなかで労働省や企業などが中心となって様々な取り組み

が行われていますので、近い将来、視覚障害者も自由にWindowsを使える

ようになると信じています。

Q:早くそうなるといいですね。ところで外付けとはどういうことなのですか。

D:パソコン背面のプリンタコネクター部に接続したり、スロットという部分にイ

ンターフェースボードという部品を挿入し、これに接続したりして使うのが一般的

です。日立製でノートパソコンに装着するものも発売されていますが、明瞭度は

良くありません。

Q:つなげば音が出るのですか?

D:そうはいきません。画面情報を音声化するソフトが必要です。これは内臓型も

同じです。

Q:良く使われている音声装置と音声化ソフトは?

D:音声装置で現在最もポピュラーなものは富士通製のFMVS101というも

のです。価格は売価で5万数千円です。

Q:ボランティアの皆さんがBASEの校正などに使っているものですね。

D:その通りです。以前は音次郎とかしゃべりん坊とか、あるいはYLV、VSS

などいろいろ使われていましたが現在はFMVSが主流です。AOK(現在はMY

−WORD)というワープロを使っている方は専用の音声装置がありますのでそれ

を使っています。

Q:では音声化ソフトには?

D:ユーザーが最も多いのがVDMというソフトです。VDMには音声装置により

いろいろな種類がありますが、価格はいずれも3万円です。このソフトは98系

が基本ですがDOS/V系もあります。

Q:その他には?

D:その他としては静岡県立大学の石川教授(本会顧問)が作ったグラスルーツと

いうものがあります。このソフトは使われはじめて間もないためまだユーザーは少

ないようです。これから増えていくことでしょう。また富士通のTowns系には

FM−Talkという専用ソフトもあります。

  次にWindowsの読み上げソフトですが、満足できるものは一つもありま

せん。そのなかで、とりあえず使われているのが95リーダーというソフトです。

なお最近NECが中心となって開発したスクリーンナビゲーターという

Windows読み上げソフトが出てきましたが、まだ評価できていません。

Q:2つ目のピンディスプレイというのはどういうものですか。

D:6本または8本のピンが横に20個とか40個並んだもので(外国製には80

個のものもある)、このピンをパソコンからの信号によって上下させて画面の文字

を点字で表示させます。ただ1台数十万円するため個人ユーザーは大変少ないよう

です。

Q:視覚障害者はいろんなところに余分な経費がかかり大変ですね。

D:だからパソコンを使いたくても購入できない人も多いのです。

Q:いつもDさんが言うように、こうした視覚障害者の存在にも十分眼を向けない

といけないわけですね。あら!何となく終りの言葉になってしまいましたが、もう

一つ画面の拡大が残っていました。

D:ソフトによる拡大と、ハードによる拡大があります。まずソフトによる拡大の

できる視覚障害者用ワープロとしてニューブレイル社の「でんぴつ」や、高知シス

テムのAOK、MY−WORDなどがあります。DOS画面の拡大ができるソフト

としてはAOK系の専用ソフトや先程お話したTowns用のFM−Talkがあ

ります。後者のFM−Talkは文字色や背景色も変えられるので自分の眼に合っ

た見やすい画面にすることができます。この機能はMY−WORD(ワープロ)に

も採用されています。Windowsの画面拡大ソフトは98系にはありません。

DOS/V系のみに使えるズームテキスト(米国製5万8千円)というのがあり

ます。画面を大きくすると視野が狭くなるためポインタの位置確認が難しくなり

ますが、このズームテキストはポインタ追尾機能があるため大変使いやすくなって

います。98系で大きくしたい時はPC−WIDEという装置をパソコンとディス

プレイの間に入れるしかありません。価格が30万円もしますが、私の友達はこれ

を使ってWindows環境をこなしています。

Q:紙面が足りなくなりましたので続きは次の機会にします。

今日は有難うございました。


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