彼女は庭の真ん中を気取って歩き回る。あたかも帝政時代の暮しでもしているようだ。

 ほかの鳥たちは、暇さえあれば、めったやたらに、食ってばかりいる。ところが、彼女は、ちゃんと決った時間に食事をとるほかは、絶えず姿を立派に見せることに浮身をやつしている。羽には全部のりがつけてある。そしてとがった翼の先で地面に筋を引く。自分の通る道をちゃんと描いておくようだ。彼女は必ずその道を進み、決してわきへは行かない。

 彼女はあんまりいつも反り身になっているので、自分の脚というものを見たことがない。

 彼女は決して人を疑わない。で、私がそばへ寄って行くと、早速もう自分に敬意を表しに来てくれたつもりでいる。

 もう、彼女は得意そうにのどをぐうぐう鳴らしている。

おそ れながら七面鳥の君」と私は彼女に言う。「君がもし鵞鳥がちょうか何かだったら、僕もビュッフォンがしたように君の讃辞さんじを書くところさ、君のその羽を一枚拝借してね。ところが、君はただの七面鳥にすぎないんだ」

 きっと私の言い方が気にさわったに違いない。彼女の頭にはかっと血が上る。くちばしのところに癇癪かんしゃくしわが垂れ下がる。彼女は今にも真っ赤に怒り出しそうになる。で、その尾羽の扇子をぱさりと一つ鳴らすと、この気むずかしやのばあさんは、くるりと向うをむいてしまう。