子供の狐は、町のを目あてに、雪あかりの野原をよちよちやって行きました。 始めのうちは一つきりだった灯が二つになり三つになり、はては十にもふえました。狐の子供はそれを見て、灯には、星と同じように、赤いのや黄いのや青いのがあるんだなと思いました。やがて町にはいりましたが通りの家々はもうみんな戸をめてしまって、高い窓から暖かそうな光が、道の雪の上に落ちているばかりでした。

 けれど表の看板の上には大てい小さな電燈がともっていましたので、狐の子は、それを見ながら、帽子屋を探して行きました。自転車の看板や、眼鏡めがねの看板やその他いろんな看板が、あるものは、新しいペンキでかれ、 るものは、古い壁のようにはげていましたが、町に始めて出て来た子狐にはそれらのものがいったい何であるか分らないのでした。

 とうとう帽子屋がみつかりました。お母さんが道々よく教えてくれた、黒い大きなシルクハットの帽子の看板が、青い電燈にてらされてかかっていました。