赤いリュック背負って

          Sちゃん(6才)のお母さん


3歳近くになっても言葉がなかったものの、個人差の範囲だろうと思っていました。念のため一度診てもらおうくらいの軽い気持ちで受けた専門医による療育相談の場で、「お子さんは典型的な自閉症です。自閉症は一生治りません。」と告げられたのは、息子が3歳2ヶ月の時でした。息をのみました。ゆっくりながらもすこやかに育っていると思っていた私にその言葉は重く響き、いったいこの先どうなるんだろう、と途方に暮れた記憶があります。

あの日から早3年、その後父親の転勤に伴い静岡に引っ越してきて、いこいの家に入園、2年目の年長さんになった息子は、やはりゆっくりながらもすくすくと、成長しています。トイレの失敗もほとんどなくなり、着替えも上手に。親や先生、じぃじやばぁばにとびきりの笑顔を見せてくれる甘えっ子になりました。子供らしい好奇心を発揮し次々に繰り出すいたずらで大人を困らせることもしばしばです。小さい子の泣き声が苦手で、遠くの方で聞こえているだけで一緒に泣いてしまっていたのが、ぐっとこらえて我慢できるようにもなってきました。万が一このまま言葉が出なくても、かわいい大切な子供であることに変わりはない、と覚悟し始めた4歳の夏、初めて「パパ」「ママ」と呼んでくれました。待った時間が長かったぶん、嬉しさも大変なものになりました。

「自閉症は確かに治ってない、でも子供は変わっていくんだな。」そんな当たり前のことを改めて実感しています。これからも子供が興味を持ったことを大事にして、伸びるところは伸びやかに伸ばしてやりたい、そしてできないことやわからないことは、いつかできたりわかったりするかもしれないこととして、その時の喜びを楽しみに待ちたい、と思っています。

息子へ

この頃少しずつ家の外の世界や他の子供たちの様子が木になるようになってきたね。お母さんはとてもうれしいです。でも、勝手によそのお家に入ろうとしたり、他の子のおもちゃを黙ってさわったりするのはダメなんだよ。
あいさつしてみよう。「いいですか。」と聞いてみよう。「いいよ。」と言ってもらえたら「ありがとう。」と言ってみよう。
断られたら、また今度にしよう。今の君にとっては難しいことばかりかもしれないね。でも、とても大切なことなんだよ。
少しずつ覚えていこう、いろんなことを、お母さんと一緒に。
さぁ、今日も出かけよう、赤い゛ちょきんぎょ゛のリュックを背負って。


Copyright(C) 2001 静岡市心身障害児福祉センター「いこいの家」
出典:いこいの家通信 No.236
静岡市心身障害児福祉センター「いこいの家」
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