歩いていこう!この道を

          Tくん(6才)のお母さん


「自閉症ですね。」
診察室を走り回る息子を見ながらの、あっという間の診断でした。
「そうですか。」と答えた私の心の中には、落胆よりも”これでやっと、道が見えた”という気持が強くありました。この日までの3年5ヶ月間、私達は道がわからず立ちすくむ“迷い子”だったのです。
男の子はよく動くし、言葉も遅い子が多いから・・・と公園で他のママ達は励ましてくれました。自分でも他の子と比べちゃいけない!これがこの子の個性なんだ、と自分に言い聞かせていました。でも“子育てって大変よねぇ”と皆が話しするなか、私の様に手をつなぐと振りほどく子どもを、一日中追いかけてる母親は、周りに一人もいませんでした。でも、楽しげに一人で歩く後ろ姿を見ると、他の子のように、手を繋いで仲良く歩ける日もいつか来るサ、まだ1歳なんだし。と笑って過ごせてきました。
でも2歳頃から、夜泣きと共に横にいる私めがけて頭突きをしてくるようになりました。歌って寝かしつけても1時間もすると再び・・・と言う具合で、毎晩数十回と続き、毎晩私の枕は鼻血と涙で濡れました。頭突きという形での自傷は昼間もあり、原因は些細な事(私のお腹がなったとか)から全くわからない事(彼なりの理由はあるが)など様々で、壁に向かって走り出すのを止めるのに毎日必至でした。それでも間に合わず、壁には3ヶ所、穴があいてしまいました。
この当時通っていたパンダ教室で保健婦さんにも相談したのですが、もう少し、3歳ぐらいまで様子を見ましょうと、たんこぶができている息子を泣きながら抱えている私は言われました。もう、どうしていいかわからず心の中が惚けたまま、3歳の誕生日が過ぎていきました。このままじゃ、前には絶対歩けなくなる。どんな道でもいいから歩かなきゃと思っての覚悟の受診だったのです。
“道が見えた”と思ってから、今、3年たちました。今だに手探り状態です。落とし穴もあるし、大きな石もあります。でも周りを見ると、今は一人ではありません。協力してくれるたくさんの人たちや、同じ悩みを抱き、一緒に歩いてくれる仲間がたくさんいます。そして、一番心強いのは、今は私としっかり手を握って笑ってお話してくれる息子がいます。これからも、泣いたり怒ったり後戻りしたりしながらも、この道を力強く歩いていきたいと思っています。
だって、もう私達は“迷い子”ではないのだから。


Copyright(C) 2002 静岡市心身障害児福祉センター「いこいの家」
出典:いこいの家通信 No.242
静岡市心身障害児福祉センター「いこいの家」
協力 ボランティア通信from静岡
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