親の願い、子どもの思い

          Hくん(6才)のお母さん


平成16年7月、息子はてんかんの発作を止める為の脳外科の手術を受けました。手術直前までボーッとする発作が1日に十数回もあり「これが本当になくなるの?」と半信半疑でしたが、見事に成功し9ヶ月経った今でも発作は再発していません。
 でもこの手術を受けるまでには2回の手術中止があり、3度目にやっと最後まで終える事ができたのです。2度の中止はどちらも、手術室に入り麻酔まで済ませ、いよいよメスを入れるという直前に、わずかな体調不良に担当の先生が気づき、その場で緊急会議が開かれ中止になったというものです。事前の検査では全く問題がなかったのですが土壇場での本人の体力不足が影響したようです。そして手術室から病室に戻って来たのは、麻酔がかかって眠っている状態の息子でした。私は大きなチャンスを逃した思いでとってもガッカリし、ただただ涙が止まりませんでした。2度目の時は「今度こそは…」と思っていたので、その落胆は更に大きなものでした。先生は「このような中止は前例がありませんが、万が一を考えて石橋を叩いて、渡るのを止めました。今後の課題として、まず体重を増やし自然な成長を待ちましょう。」とおっしゃいました。その思いが通じたのか、それからの息子はモリモリ食べて、2、6`も体重を増やし、一年後に無事手術を受けることができたのです。術後の回復もとても順調で、手術から1ヶ月もたたないうちに退院する事ができました。3度目の正直で受けることができた手術ですが、終えてみて思ったのは、その前の2回の中止は息子自身が「お母さん、僕はまだ手術を受けたくないよ。もう少し大きくなるまで待って!」と、言葉にできない思いを精一杯体で訴えたのかもしれない、という事です。きっとあの時、無理に手術を続行していたら、今の元気な息子の姿は見られなかったかもしれません。私の中で1日も早く手術を受けて、発作を止めなくては…と、焦る気持ちがあったかもしれません。
 現在の息子は、ここ数ヶ月で心身共に目に見えて成長し、運動面では大人の手を借りなくても、一人であるけるようになりました。1年前には想像できなかった姿です。
 長い人生、これからもいろいろな場面で親が判断、決定していかなければならない事がたくさんあるはずですが、そんな時、『言葉にできない息子の思い』を、目で見て心で感じて、察してあげなければならないのだと思います。
 今まで息子と私たち家族を励まし支えて下さった皆さん、ありがとうございました。この場をお借りして、お礼申し上げます。そしてこれからも、今まで同様温かく見守り続けて下さるよう、心からお願い致します。
 私たち家族も力を合わせて、前向きに進んでいこうと思います。未知なる可能性を信じて…。


Copyright(C) 2005 静岡市心身障害児福祉センター「いこいの家」
出典:いこいの家通信 No.277
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