歩き続けよう

          結菜さん(6歳)のお母さん


結菜は、歌が大好きです。言葉は話せないので、歌詞を歌う事はできませんが、鼻歌のように歌いながら、リズムに合わせて楽しそうに、体を動かしています。特に「シアワセ」という歌が大好きで、「しー」と言いながら手拍子をして、私に歌うように催促します。私が歌い始めると、嬉しそうに笑っています。自分の要求が私に伝わった時の、嬉しそうな笑顔を見ると、私も嬉しい気持ちでいっぱいになります。

二歳を過ぎても、結菜は私の言葉が理解できず、自分の気持ちを言葉で伝えることができませんでした。私には、どうして泣いているのか、何が嫌で怒っているのか、まったくわかりませんでした。一日中一緒にいる母親なのに、どうして私は結菜の気持ちを察する事ができないのだろう・・。この頃の私は、想像するしかできない結菜の気持ちを、自分なりに理解しようと必死でした。名前を呼んでも振り向かず、話しかけても何の反応もない。私が隣にいる事にも気付いていないように、自分の世界で遊んでいる結菜を見ながらの辛い日々が続きました。ある晩、いつものように泣き続けて寝付けない結菜を抱きしめながら、「お母さんは、何があっても結菜が大好きだよ。ずっと一緒にいようね。」と声をかけると、すぐに泣きやんで、そのまま眠ってくれました。今思えば、偶然だったのかもしれません。でも私は、今までは一方通行だと思っていた結菜への愛情と言葉が、初めて結菜に受け入れてもらえたような気持ちになり、涙が止まりませんでした。

結菜は、まだ言葉を話す事ができませんが、言葉を理解する力はついてきています。やりたい事や欲しい物は、しぐさや行動で私も理解でき、お互いのストレスも少なくなりました。でも、まだ苦手な事も多く、悩んでしまう時もあります。そんな時は、「自閉症だから、無理なのかな。」と思い、諦めていました。でも、いこいさんの先生の「結菜ちゃんは、できる力を持っている。頑張ればできるよ。」という言葉で、気が付きました。母親の私がすぐ諦めるのは、結菜の力を信じていないという事。結菜を応援する一番の方法は、結菜の持っている力を信じることだと思いました。

最近、手をつないで歩いている時、何気なく結菜を見ると、私の顔を見上げて「ニコッ」と、笑いかけてくれる事が何度もあります。言葉では聞けないけれど、その笑顔は「お母さん」と呼んでくれているような気がして、とても嬉しくなります。このような小さな幸せを一つ一つ見つけながら、これからも結菜と仲良く手をつないで、少しずつ歩き続けようと思います。年少でいこいさんに入園した結菜も来年の3月で卒園です。親子共に一番大変な時期を支えられ、たくさんの笑顔をもらった事、本当に感謝しています。いこいさんの先生をはじめ、今までお世話になった多くの方々への感謝の心を忘れずに、これからも結菜の成長を見守っていきたいと思います 。


Copyright(C) 2005  こどもの杜「いこいの家」(静岡市心身障害児福祉センター)
出典:いこいの家通信 No.279
協力 ボランティア通信from静岡
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