その小さな手に導かれて

          裕斗くん(5歳)のお母さん


 既に男の子とわかっていたお腹の赤ちゃんは「早くここから出せよ〜!」と言わんばかりに凄い勢いで私のお腹を蹴り飛ばすやんちゃ坊主でした。予定日より3週間早く、分娩時間1時間と超スピードで我が家の長男裕斗が誕生したのです。

 2人目の子供でもあり、育児に不安や疲れもありませんでした。「早く子供たちのユニークでかわいい会話が聞きたい。」それが2児の母となった私のささやかな楽しみでもありました。

 順調に成長していく我が子、声に単語が生まれ、姉と笑顔ではしゃぐ姿にその日が遠くないものと確信していたのでした。
 ところが、声から単語が消え、呼びかけに反応しなくなった裕斗に「自閉症」の診断が出されたのです。「病気なの?」「障害?なぜ裕斗が?」自分の世界に一切"障害"という言葉、そしてそれが現実としてのしかかってきた時、「なぜ?」その言葉は、私の頭の中で何度も何度もこだまし、なにも見えない暗闇の中で、その答えを探し続けているのでした。

 そして今、「いこいの家」に通い始めて2年半、入園当初の頃からは想像できないほど成長し、毎日楽しそうに園に通う裕斗の姿をみていると「なぜ?」の答えは必要ないものとなりました。その場に立ちすくみ過去を振り返ることしかせずにいた私は、振り返ることを知らない子供たち、前を向いて懸命に進むその子供たちの姿に、数多くの勇気や希望を与えられました。
 振り返る必要はない。でも、振り返ってしまう時や進むべき道に迷い立ちどまってしまうことがあったら、「母さん、こっちだよ」その小さな手で引っ張ってね。「前はこっちだよ。」って導いてね。ねぇ、裕斗くん。

 いこいの先生方、裕斗の持っている力、そして笑顔をたくさん引き出してくださり本当にありがとうございました。心暖かい先生方のおかげだと、心から感謝しております


Copyright(C) 2006  こどもの杜「いこいの家」(静岡市心身障害児福祉センター)
出典:いこいの家通信 No.287
協力 ボランティア通信from静岡
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