成人の血友病と生活問題       兵庫医科大学病院 医療社会福祉部 伊賀 陽子

小児から成人への移行期は、親の庇護下で生活してきた子供が、自分で物事を考え、選び、挑戦し、責任を担っていくという自立の過程でもある。

小児期には、様々な問題に頭を悩ませ、解決するのは親であるが、成人期には自身が主体者として人生の中で起きてくる様々な問題に直面し、解決していかなければならない。 

また、自身の問題だけでなく、子育てや介護など、他者に対する責任が生じるのも成人期の特徴である。

小児期より慢性疾患を持っている場合、得てしてこの移行期に疾患および、それを取り巻く生活上の問題を本人自身の問題としてとらえ直す過程が、うやむやになっている場合がある。中途半端な知識と経験は混乱をもたらすこともあるかもしれない。

血友病は、生活と密着した病気である。血液凝固因子製剤の開発や家庭内治療の導入により血友病患者の生命予後や社会生活におけるQOLは著しく向上してはいるものの、やはり病と共に生活する中には、他の人以上に頭を悩ませる問題も依然として多く存在している。

今回は、ソーシャルワークの立場から成人期にしばしば訴えられる生活上の問題を取り上げ、その背景にあるシステムの考え方、助成制度の成り立ちや概念、今後の生活に役立つ可能性のある諸制度などを紹介しつつ、血友病患者が諸問題をなるべくポジティブに受け止め、主体的に、また積極的に社会参加してゆくための方途を共に探って参りたい。