相談員会報 身体障害者相談員全国連絡協議会  会長   阿部一彦(あべかずひこ) 皆さま、お元気ですか。 『相談員会報』をお届けする時期がまいりました。障害者相談活動は、地域の絆を深める上で重要な活動の一つです。特に近年、大きな災害の発生が懸念されることから、普段の生活から地域と連携を図り、災害時における障害者の困りごとをしっかりと伝え、対策や支援体制に備えることも期待される相談活動の一つと考えます。 新型コロナウイルス感染症拡大が心配される日々ですが、一日も早い終息を願うとともに、必要とする適切な対策が講じられるよう国への働きかけにも努めていく所存です。 令和の年を迎え、明日への希望につながる共生社会の実現をめざし、日身連及び本協議会は連携協力して、相談員活動の周知と一層の促進をめざし努力して参る所存です。 皆さまには、障害をもつピアな立場の相談員として、日々の自己研鑽をお願い申し上げますとともに、ますますのご活躍をご期待いたします。   記事1 本年1月に、バリアフリー法及び関連施策のスパイラルアップに係る今後の対応策として『2020報告書』が取りまとめられました。報告書では、心のバリアフリー施策の推進と個別施設のさらなるバリアフリー化に向けた施設設置管理者等の取組促進のあり方に関する対応策がまとめられています。  バリアフリー法・関連施策のスパイラルアップに係る主な対応策について  ●心のバリアフリーなどソフト施策の推進 バリアフリー法を改正し、ソフト対策等の取組を強化 @交通結節点で他の公共交通事業者等や行政その他の関係者と連携・協力し取り組むことを努力義務化 A観光庁が認定する観光施設(宿泊施設、飲食店等)の情報提供を促進 B移動等円滑化促進方針(マスタープラン)に心のバリアフリーに関する事項追加 ●個別施設のさらなるバリアフリー化への施設設置管理者等の取組促進 @新たに公立小中学校を対象に追加するため関連規定を見直し Aバス等の条項のための道路施設(バスタ新宿等)のバリアフリー基準適合義務化 ●ハード・ソフト施策の取組も加速しています。一部、国交省等の取組をご紹介します。 ◇ユニバーサルデザインタクシーに関すること◇ 国交省内の検討会等でUDタクシーに関する検討が進められています。検討において机上の議論だけではなく、実証の重要性が提案され、昨年8月に日産本社ギャラリー(神奈川県横浜市)で試乗会が開催されました。試乗会には、日身連他2つの障害者団体、国交省、日産関係者が参加しました。日産の担当者からUDタクシーの概要説明を受けた後、2種類のUDタクシーに試乗。スロープの仕様や乗り降り、車内の乗り心地等のチェックを行いました。試乗後は意見交換を行い、事故等があった場合の安全面やスロープ配備車両の一般化の要望等のほか、こうした機会を増やすことで、利用しやすいUDタクシーが生まれる等、相互に有益な意見交換となりました。                            ◇新幹線のソフト・ハード対策に関すること◇ 新幹線のバリアフリー対策を抜本的に見直すために、昨年12月から鉄道事業者と障害者団体等による検討会が開催されることになりました。さらに、車いす使用者への具体的な施策の検討を行うために、検討会の下に新幹線のソフト・ハード対策検討ワーキンググループ(WGという。)が設置されました。WGでは、車いすで利用する際のニーズ対応や移乗、車いすスペースの確保等のハード面と予約方法等ソフト面について協議を重ねるとともに、海外の事例等も参考にしながら課題解消にむけた具体的な提案の検討を進めています。そして、本年3月、これまでの議論を踏まえ、新幹線の新たなバリアフリー対策についての中間とりまとめを公表しました。今後は、早急な対応の見直しとともに2020年以降を視野に、本年5月頃を目途に取りまとめを行う予定です。 会議には日身連他3つの障害者団体とJR5社(北海道、東日本、東海、西日本、九州)が参加しています。 ◇小規模店舗の設計等に関すること◇ 国交省では、高齢者・障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(ガイドライン)の改正から2年半余りが経過したことから、必要な見直しを検討するために、高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準の改正に関する検討会及び小規模店舗ワーキンググループを設置しました。委員には、日身連等障害者団体や高齢者団体、学識経験者、事業者団体、建築関係団体、地方公共団体のほか、オブザーバーとして国交省と関係府省庁で構成されています。 本年1月に第1回目の会合が開催され、観光庁、金融庁、東京都、日本フランチャイズチェーン協会、日本ショッピングセンター協会、日本フードサービス協会、全国銀行協会から、バリアフリーに取組が報告されたほか、小規模店舗のバリアフリー化や重度障害・介助者への対応等に関する課題の整理と、検討の方向性のたたき台について議論が行われました。来年度内を目途に、ガイドラインの改正すべき内容について検討が行われる予定です。 ちょっと紹介! 〜 今後につなげたい連携関係の実践例 〜  ■ヒルトン東京ベイのバリアフリーチェックに協力 昨年8月、東京ディズニーランド近隣のヒルトン東京ベイ(千葉県浦安市)の呼びかけで、視覚、聴覚障害者団体のご協力も得、ホテル内のバリアフリーチェックと意見交換会を行いました。チェック方法は舞浜駅から送迎バスに乗車するところからホテルのチェックイン・アウト、客室までの動線、トイレやレストラン等について、総支配人のブランツマ氏やスタッフの方と一緒にスタッフの接遇等も含めて、現場を見ながら相互に確認し行いました。確認ポイントは、滞在時の障害種別による困りごとは何か、どのような設備のあり方がいいのか、どのような対応があると安心した滞在ができるか等。視察参加者からは、大きな改修が難しくても工夫次第でできることや、“何かお困りですか”の声がけが大切なコミュニケーションの始まりとの感想がありました。ブランツマ氏からは、おもてなしの姿勢を提供する上でいろいろなことに気づかせていただけた。今回の機会を大切に、今日を最初のステップとして始めていきたいと意欲溢れるお話しがありました。今後につなげることの意義が確認できた視察となりました。 記事2 今年度の企画も大変好評でした。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。 ◇障害者110番運営事業研修会  7月5日(金)、全国社会福祉協議会会議室(東京都千代田区)において、障害者110番事業の担当相談員などを対象に、講演とグループ討議による研修会を行いました。研修会前半は、『職場定着のための取組』と題し、NPO法人ワークス未来千葉、千葉障害者就業支援キャリアセンター長の藤尾健二(ふじおけんじ)さんに講演いただきました。障害者の就労と生活の相談を一体的に行う機関として設置された障害者就業・生活支援センター(ナカポツセンター)での経験と実績を踏まえ、障害者雇用の課題や今後について、分かりやすくお話しいただきました。また、精神障害者や重度障害者の雇用が大きな課題になってくることに触れ、全国に334か所にまで整備されたナカポツセンターを、福祉圏域の中核として積極的に活用してほしいと呼びかけました。 後半は、阿部一彦(あべかずひこ)日身連会長を進行役に、7つのグループに分けワークショップを行いました。学校、交通機関、住居、公共施設、就労、スポーツ芸術、災害のテーマをもとに、架空の相談事例を考え、その事例解決については別のグループが検討を行いました。時間一杯まで活発な議論を交わしました。 参加された方からは、ナカポツセンターの役割が分かり、相談に活かせると感じた、事例の作成は、いろいろな方の視点を学べて大変参考になった等、感想が寄せられました。相談技術のスキルアップにつながる貴重な研修会となりました。 ◇「障害者週間」内閣府連続セミナー 日身連シンポジウム  12月6日(金)、有楽町朝日スクエア(東京都千代田区)において、今年も内閣府障害者週間連続セミナーで、日身連主催の『障害理解啓発ワークショップ〜伝える力・受け取る力を考えよう〜』を行いました。全国から34人が参加、5つのグループに分かれてワークショップを行いました。ワークショップでは、障害者の困りごとを伝える力(発進力)と、その困りごとを受取る側の意識力(気づき)を高めることをポイントに、「大規模災害に遭遇、小学校の体育館に避難」という設定で、2つのテーマ(@障害者にとって不安や困難に思うことは何か。Aどのような支援や配慮が必要か。)についてディスカッションしました。年齢や職業等さまざまな立場の参加者同士、一人一人が自分の考えや普段感じていることなどについて意見を交わし、熱気あふれるものとなりました。参加者からは、障害に対する理解啓発の必要性を考える貴重な機会となったことや、こうした研修がその場だけで終わってしまうのではなく、学校や地域住民等を巻き込んで行う必要がある等、次回への期待の声がありました。 最後にコーディネーターの阿部一彦(あべかずひこ)日身連会長が、“障害理解を地域に根づかせるためにも、いろいろな方と一緒に考える場を持つことが大切。地域での啓発活動をさらに進めていきたい。”とワークショップを締めくくりました。 ◇「心のバリアフリー啓発プログラム研修」 (地域における障害理解に向けた啓発促進事業・助成事業) 障害者団体と地域社会の積極的な関わりの実践版として、心のバリアフリーを軸に、日身連と加盟団が協働して全国6か所で「心のバリアフリー啓発プログラム研修」を開催しました。各会場とも地域で心のバリアフリーの啓発促進に関心のある方や実践したい方等沢山の方に参加いただきました。また、事業の企画等の検討を行った実行委員の方々には進行や運営サポーターとしてご協力いただきました。 研修は、模擬シナリオによるワークショップ体験と、ワークショップを振り返ってグループごとに意見交換を行いました。ワークショップでは、障害のある人が街なかで困っている場面を想定し、その困りごとの事例を考え、解決方法や解決する上での問題点、さらに障害理解に結びつくキーワードについてグループディスカッションしました。また、途中、アニメ動画『心のバリアフリーについて学ぼう』(内閣官房製作)を視聴し、障害への気づきと相互理解について考えました。意見交換では、さまざまな発言や提案をいただきました。充実した研修となりましたが、参加された方からは、時間をもっと長く設定するとさらに良かったといった研修への期待の声や、自分たちでも実践していきたい、社協との連携の重要性等の積極的な意見や感想等が寄せられ、地域を巻き込む研修への意識を共有できた研修になりました。 ≪全国6か所で開催したワークショップは以下の通りです≫ ※全6ブロック参加者 305人(6か所合計) @ 中部ブロック:中嶋宏行(なかしまひろゆき)実行委員(三重県身連事務局長) 令和元年10月24日(木)ホテル花水木コンベンションホール・三重県桑名市 A 東北・北海道ブロック:野辺地省吉(のへじしょうきち)実行委員(岩手県身協事務局長) 令和元年10月31日(木)ホテルメトロポリタン盛岡NEW WING・岩手県盛岡市 B 関東甲信越静ブロック:菊地通雄(きくちみちお)実行委員(茨城県身連事務局長) 令和元年12月10日(火)オークラフロンティアホテルつくば・茨城県つくば市 C 近畿ブロック: 八田由美子(はったゆみこ)実行委員(京都市身連事務局長) 令和元年12月19日(木)アークホテル京都・京都府京都市 D 九州ブロック:次美佳(たかつぎみか)実行委員(福岡市身協110番相談員) 令和元年12月20日(金)JR博多シティ・福岡県福岡市 E 中・四国ブロック:山中博美(やまなかひろみ)実行委員(広島県身連事務局) 平野恵子(ひらのけいこ)実行委員(広島市身連事務局) 令和元年12月23日(月)リーガロイヤルホテル広島・広島県広島市   ワークショップで使用した模擬シナリオ、投影資料(パワーポイント)、アニメ動画『心のバリアフリーについて学ぼう』については、日身連ホームページからダウンロードできます。どうぞご活用ください。 研修内容等についてのお問い合わせ等は日身連事務局(8pg掲載)までご連絡ください。 令和元年度身体障害者相談員研修会報告 全国6ブロックで企画・開催、約2300人の方にご参加いただきました ■東北・北海道ブロック(令和元年11月14日 岳温泉光雲閣・福島県) ・基調講演1「障害保健福祉施策の動向 高齢障害者への対応共生型サービスについて」 講師 吉野智(よしのさとる) 厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課障害福祉専門官 ・基調講演2「さわやかなドライブの概要について」 講師 安斎文彦(あんどうふみひこ) 昭和タクシー株式会社代表取締役社長 ■関東甲信越静ブロック(令和元年9月3日 ホテルポートプラザちば・千葉県) ・講演「身体障害者と相談員」  講師 神林保夫(かんばやしやすお) 千葉県身体障害者福祉協会顧問 ・講演「言葉のちから 無限大!」 講師 岩ア由純(いわさきよしずみ) 日本ペットトーク普及協会代表理事 ■中部ブロック(令和元年10月23〜24日 長島温泉ホテル花水木・三重県) ・講演「東京パラリンピックを契機とした共生社会の実現とそれに向けた地域の役割」 講師 御手洗潤(みたらいじゅん) 内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局 ・講演「障害者の就労・雇用の現状と課題」   講師 赤星真二(あかぼししんじ)高齢・障害・求職者雇用支援機構三重障害者職業センター主任 障害者職業カウンセラー ・複合リゾート施設「なばなの里」現地研修会 ■近畿ブロック(令和元年11月18日 ビッグアイ・大阪府) ・講演「障害者差別解消法について」 講師 衣笠秀一(きぬがさひでかず) 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官 ・講演「障害者差別解消法施行、その後の動向と進捗状況について」 講師 尾上浩二(おのうえこうじ) 内閣府障害者施策アドバイザー ■中国・四国ブロック(令和元年10月3日 きらめきプラザ・岡山県) ・講演「東京パラリンピックを契機とした共生社会の実現とそれに向けた地域の役割」 講師 岩川勝(いわかわまさる) 内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局参事官 ・講演「西日本豪雨・アルミ工場爆発時の地域住民の避難行動について」 講師 川田一馬(かわだかずま) 岡山県総社市下原・砂古自主防衛組織副本部長 ■九州ブロック(令和元年11月14日 佐賀市文化会館・佐賀県) ・講演「東京パラリンピックを契機とした共生社会の実現とそれに向けた地域の役割」 講師 菊田逸平(きくたいっぺい) 内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局企画官 ・第1研究部会『障害者差別解消法の理解と啓発について』 ・第2研究部会『行政との連携及び災害時に備えた組織強化』 ・第3研究部会『障害者相談員の資質向上と相談活動への支援について』 身体障害者相談員全国連絡協議会理事会 報告 本年2月13日、ホテル相鉄フレッサ(東京都江東区)において、令和元年度身体障害者相談員全国連絡協議会理事会が開催されました。会議では、令和元年度身体障害者相談員全国連絡協議会事業報告案及び決算見込みと令和2年度同協議会事業計画案及び予算案が検討されました。以前より相談員が携帯できる手引書の発行を希望する意見を受け、来年度にハンドブックの改訂版を発行する予定であること等が説明され、すべての議案が全会一致で了承されました。また、議案の検討終了後、隣接する施設で開催されていた「シーズ・ニーズマッチング交流会2019」に出展している日身連のブースやさまざまな出展企業の機器等を見学する等、意見交換にとどまらず、開発中の福祉機器の情報等の機会を得た会議となりました。 【令和2年度資金収支予算書案(理事会資料より)】    (単位:円) 勘定科目 前年度予算額 当年度予算額 増額 収入 協議会会費収入 640,000  640,000 0 合 計     640,000  640,000    0 支出 職員給料 90,000  90,000     0 旅費交通費 203,000  203,000     0 印刷製本費 240,000  240,000     0 通信運搬費 46,000  46,000  0 会議費     2,000  2,000      0 賃借料     9,000  9,000      0 土地建物賃借料 50,000  50,000     0 合 計     640,000  640,000  0 (本協議会・事業活動による収支分抜粋) テキストデータ無料Eメールサービスのご案内 身体障害者相談員全国連絡協議会では、このたび発行いたしました「相談員会報」を視覚障害のある皆様にご愛読いただけるよう、本号のテキストデータをEメールにてお送りしています。ご希望の方は、以下、本協議会事務局までご連絡ください。 相談員会報第21号 発行日  2020年(令和2年)3月31日 発行所  東京都豊島区目白3−4−3 デァダンクビル4F 発行人 日本身体障害者団体連合会内身体障害者相談員全国連絡協議会 TEL 03−3565−3399 FAX 03−3565−3349 E-mail jfod@nissinren.or.jp http://www.nissinren.or.jp