第1回点字技能検定試験について
Q:貴方 D:増本
ネットワーク便り24号(2000年11月発行)から引用
Q:今回も視覚障害者関係の情報機器についてうかがうつもりでしたが、8月に開かれた「点訳ボランティア研修交流会」の席上、Dさんから来年早々点字技能検定試験が実施されるとのお話をうかがいましたので、当日参加されなかった皆さんのために、今日はこの件についてうかがうことにします。
D:実は今秋から来春にかけて視覚障害者に関係した新試験が2つ実施されることになっています。その一つは視覚障害者の日本語文書処理技能検定試験であり、他の一つが点字技能検定試験です。
Q:視覚障害者も日本語処理技能検定試験が始まるのですか。
D:最近は一般企業に就職する視覚障害者も徐々に増えてきていますが、こうしたなかで文書処理能力を示すライセンス取得の要望が高まっています。
この欄でも触れているように、パソコンを使えば視覚障害者であっても自由に文字を書けるようになっていますので、この検定試験の実施は時宜にかなったものと思います。一般企業で働く視覚障害者や一般企業への就職を考えている人以外でも、日ごろの自分の文書処理能力を試す意味で是非受験してほしいと思います。
Q:この試験については機会をあらためて伺うこととして、ここでは点訳ボランティアに大いに関係ある点字技能検定試験についてうかがうことにします。
D:では、まずこの試験の目的について試験要項に記載されているところを紹介します。「点字に関する卓越した知識、技術を有する者に対して資格を付与することにより、点字関係職種の専門性と社会的認知度を高め、併せて点字の普及と点字の質の向上を図り、視覚障害者に的確な情報を提供することを目的とする。」となっています。
Q:卓越した知識と技術となると試験も難しくなりそうですが、どんな試験が行われるのですか。
D:試験は学科試験と実技試験に分かれます。また実技試験は点字化と校正の試験があります。
Q:学科というとどんな内容なのですか。
D:これも試験要項を引用すると、視覚障害者福祉に関するもの、点字に関するもののほか、広く障害者福祉に関する知識および理解度を問い、合わせて国語に関する知識も問うとし、障害者福祉一般、および点字、国語、視覚障害者に関する基礎知識を出題するとなっています。
Q:非常に幅広く出題されるわけですね。点訳技術のレベルが高いだけでは受かりそうもありませんね。
D:この試験には、点字が正確で迅速に処理できるだけではなく、点字を含めた視覚障害者の教育、職業、福祉に関する知識を習得して、視覚障害者への理解を深めるという「思い」があるようです。
Q:問題量はどのくらいなのですか。
D:まだ、出題問題数は明らかではありません。各問題は4者択一式で試験時間は2時間となっています。
Q:問題は点字で出題されると聞きましたが。
D:その通りです。問題は全て点字で出題されます。ただし、学科試験の解答については墨字で良いことになったようです。
Q:「……なったよう」ということは解答も点字になったかも知れないのですか。
D:そういう意見もあったと聞いています。
Q:実技試験の内容も教えて下さい。
D:実技試験は墨字の問題文を点字化する点字化技能試験と、原文と点字化された文を比較し校正する校正技能試験の2種類となっています。こちらの試験時間は両者で2時間30分です。
Q:実技試験の際の点字表記は何を参考としたら良いのでしょうか。
D:2001年に新しい「点字表記法」が出版の予定ですが、第1回の試験はそれより前に実施となりますので「表記法1990年版」がまだ生きていることになります。したがって、今回の試験はこれに従うことになったようです。次回からは新しい表記法に従うのではないかと思います。
Q:最近の点訳ボランティアは多くの方がパソコンを使って作業していますが、検定試験でもパソコンを使って良いのですか。
D:一般に点字板といわれる点字器、あるいは点字タイプライターを使うこととなっており、パソコンの持ち込みは不可となっています。
Q:そうなると、パソコンのみで作業している方は、それらの器具で練習しないといけませんね。
D:手話通訳士と同じように点字技能士もいずれは国家資格にしたいとのことですので、やはりそうなると点字器を使って点字が書けるような技術は必須条件となるでしょうね。
Q:実技試験には専門点訳で扱うような問題も出題されるのでしょうか。
D:点字文の内容は学科試験も含めて一般的な日本語の範囲となっており、専門書の内容には触れないとなっています。ただし、外国語や算数等については一般書に見られる程度の内容は含むとなっています。したがって、理数の高度記号や情報処理点字、あるいは楽譜などといった内容は含まれないことになります。
Q:それを聞いて少し安心しました。ところで気になるのは受験料ですが。
D:1万円です。国家資格ではないのでやや高いと思われる方もあるでしょうね。
Q:ボランティアはこの資格を何かに使うというのが目的ではありませんので確かに高いと思われる方もあるでしょう。
Q:落ちると結構痛いですね。だからこそ、試験の目的にもあるように十分な知識と技術を身につけて試験に臨んでもらいたいと思います。
Q:落ちると面子もありますからね。
D:点訳グループの代表や点字の指導者が落ちるとやはりつらいものがあるでしょうね。
Q:お金と面子のダブルでは元気がなくなります。
D:こっそり受験し、合格したら騒げばいいんですよ。
Q:とにかく受けないことにははじまらないということですね。では第1回目の試験日、受付期間、会場など教えて下さい。
D:その前に付け加えておくことがあります。実は認定書をいただくには登録が必要なようですが、この登録にも登録料として3000円が掛かることを覚えておいて下さい。
さて、第1回目の試験日ですが平成13年1月28日(日)です。会場は東京と大阪ですが、具体的な会場はまだ不明です。願書受付期間は9月15日(金)から10月31日(火)までとなっています。したがって、この記事が皆さんのお手元に届くころには残念ながらもう受付が終了しています。関心を持たれた皆さんは是非次回、受験していただきたいと思います。
Q:EVN静岡の会員は積極的に受験してほしいですね。
D:手話通訳士と同じように、点字技能検定試験も受験マニュアルのたぐいが、そのうちにきっと発売されると思いますから、是非頑張ってほしいものです。でも受験に際してはくれぐれも内密に(ハッハッハッ)。ところで、この試験には年令制限があるんですよ。
Q:えっ、若い人しか受験できないのですか。
D:いえいえご安心下さい。上ではなくて、下の年令です。受験資格の年齢は試験実施年度内に満18才以上になった者となっています。
Q:そろそろ誌面がなくなりますので、最後にこの試験の問い合せ先を教えて下さい。
D:問い合せは手紙かファックスのみとなっていますのでご注意下さい。
〒162-0054 東京都新宿区河田町10−10
日本盲人社会福祉施設協議会
点字技能検定試験事務局
TEL・FAX 03−3357−0090
Q:有難うございました。
「このコーナーに関するお問い合せは下記へお願いします」
視覚障害者情報機器アクセス支援グループ 代表 増本 旭
Tel・FAX:0538-43-2952
携帯:090-9176-3880
NIFTY Serve ID:RXM05721