小児病棟における絵本の利用プラン
浜松医科大学小児科 藤井裕治

小児病棟においてデス・エデュケーションのためのひとつの道具として、様々な絵本や児童文学書の利用法を紹介しましょう。 
小児病棟における絵本の利用プラン
 小児病棟においてはプレイルームなどの本棚の中に死に関する絵本も一緒に並べて、他の本と同様にいつでも普通に読める環境をつくる必要があります。また、いつ・誰が(または自分で)・どんな本を選ぶかが問題になってきます。入院して来たばかりの子どもに、死に関する絵本を読んでも何の興味も示さないか、いたずらに恐怖心を引き起こすかも知れません。そこで、まずは、入院の原因になった病気のことやヒトのからだの絵本、または病院についての絵本(あなたの病院の中の地図や、医師や看護婦の紹介の絵本を作ってみたらどうでしょう)を、子どもたちに人気があり興味を湧かす絵本とともに読む機会を与えてはどうでしょうか。

 例えば、「アンパンマン」「きかんしゃトーマス」「迷路」や遊び歌「あがりめさがりめ」(ましませつこ;こぐま社)始めとして、「キャベツ君」「三びきのコブタのほんとうの話」「つきよのかいじゅう」などは子どもたちにとても人気のある絵本です。これらの絵本と伴に、病院や病気・検査の本「ひとまねこざるびょういんへいく」「うさこちゃんのにゅういん」「ノンタン がんばるもん」「チャーリー・ブラウンなぜなんだい?ともだちが、おもい病気になったとき」「やさしさの引力」「急性白血病と診断された君へ」「君の病気について知ろう 小児白血病」「君と白血病」を紹介してあげましょう。

 そして病院や入院生活に慣れてきたら、いろいろな生命に関する本「100万回生きたねこ」「葉っぱのフレデイ」「ハガネの歯」「トムテ」「ひかりの世界」「ほしとたんぽぽ」「カラフル」「夏の庭 The Friends」「ハリー・ポッター」を選んであげましょう。もし友だちの死に出会い、その子のことを知りたい欲求がある場合は、正直にそして子どもの理解度に合わせて死について話してあげましょう。そのような時に以下の絵本は「わすれられないおくりもの」「ずーっとずっとだいすきだよ」「いつでも会える」「アニーとおばあちゃん」等が役立つと思います。再発で入退院を繰り返したり、自らの死期を悟った時にもきっとこれらの本は役立つと思われます。また、子どもを亡くした遺族に対しては御悔やみの言葉の代わりとして、「わすれられないおくりもの」や「十二番目の天使」を贈ると、遺族の死の受容の手助けにもなります。

 実際に、ある患児は院内学級の夏休みの宿題で「葉っぱのフレデイ」の読後感想文の中で、「死は全ての喪失を意味するのではなくて、亡くなった後もいろいろな形で皆とつながっていて決して終わりではないことを知った」と書いています。また、自分の意志で緩和医療を選択したある別の患児は、「葉祥明の本はこう思えたらいいなという"夢"みたいなもの、星野富弘の本は"現実"。"宇宙からの声"や"葉っぱのフレディ"にも死はひとつの変化に過ぎないと書いてあったけど、そう考えると死は恐ろしいことではない。それより私は、自分が忘れられることが恐ろしかった」と話しています。子どもたちの死の不安は、“死ぬときの痛み”や“死後がどうなる”よりも“ひとりぼっちになる”や“忘れ去られてしまうモ不安の方が大きいのではないでしょうか。

 また“絵本の読み聞かせ”は「これからしばらくの間、あなたと時間を共有しますよ」というメッセージが含まれています。医療者や家族は死に不安や恐怖の中にいる子どもたちを前にして逃げないで、ゆっくり傍らにいて子どもたちが望んでいる答えを一緒に探してあげて下さい。その答えにピッタリな絵本が見つかればと思い、浜松医科大学小児科のホームページhttp://www2.hama-med.ac.jp/w1b/pediatr/f_kenkyu.html)の中に“いのち”を考える絵本・児童文学書を紹介しています。また、そのホームページには病気を理解するための手助けとして、“血液とそのはたらき”を様々なイラストや動画で紹介や“急性白血病患児へのアセントの試案”も掲載しています。浜松医科大学小児科のホームページも一度、覗いてください。
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