「視角障害者の、これからの録音図書である、デイジーへの移行について


カセットテープの情報誌を高速コピー機でプリント作業をしていると、
突然コピーが、できなくなってしまった。
そこで早速メーカーに電話したところ、
「もう修理部品の在庫がないので修理できない」とのこと。
これは困った。
これでは視覚障害者に毎月送っていた広報や情報のテープが届けられなくなってしまうのである。
 音訳ボランティアの皆さんは、こんな事態を想像したことがあるでしょうか。
これは現実に起こったことではありませんが、けっして他人事ではありません。
皆さんのグループでも明日、同じようなことが起こる可能性は十分あるのです。
 私は今まで、いろいろなところで、カセットテープの終焉が近いことを話て参りました。
しかしテープ音訳(アナログ)からデイジー図書(デジタル)へと活動の中心を移していくグループはなかなか増えて行きません。
 視覚障害者の間からは「デイジー図書は操作が難しい。
カセットテープは簡単」と言う声がよく聞こえてきます。
 確かにカセットテープはレコーダーにセットして再生ボタンを押せば、すぐに内容を聞くことができ、
取り出す時も停止ボタンや取り出し(イジェクト)ボタンを押すことですぐに取り出すことができます。
媒体の取り扱いも特に注意することはありません。
ところがCD図書をプレクストークで聞こうとすると、
セットしてから聞けるまでに数秒から数十秒かかり、取り出すときも同じように時間がかかるため、すぐに再生したり、取り出したりすることはできません。
管理面でも記録面に傷をつけたり、ほこりが多数つかないような注意が必要です。
デイジーCDの再生機であるプレクストークは操作ボタンがたくさんあるため、一見かなり難しそうな印象も与えます。
 こんな点からも、カセットテープ図書を長く利用してきた人の中からは、
「デイジーは難しい。面倒くさい。」などと敬遠する声も聞こえてくるのです。
 しかしそれはデイジー図書の特性を理解していないことから起こってくることなのです。
 このところ私のところにも、「プレクストークの操作がよく分からないので教えてほしい」と言う要望が多く寄せられるようになってきました。
そのため最近は操作講習を担当する機会も増えてきています。
そんななかで感ずることは、
ユーザーの中にはデイジー図書をカセットテープを聞くような感覚で利用している人が非常に多いということです。
つまり再生と停止を中心とした操作体系のみで利用しているのです。
文学書などはこれでも良いのですが、デイジーの機能を発揮する情報誌や実用書などでは、
デジタルデータであるデイジー図書の利点はほとんど発揮されません。
 これではカセットテープの方が便利と言う声が出ても仕方がないわけで、
いつまでもカセットテープ図書の希望者が存続することになります。
 しかしすでにカセットテープの国内生産は終了しています。また、カセットテープレコーダーの生産も、まもなく全面終了すると聞いています。
文頭でふれた高速プリンタも、すでに生産完了しています。
後は部品サポート期限だけが頼りという状況です。
 「カセットテープ図書の希望者がある限り、最後の一人まで、そのニーズに応えていくのが当然」という意見もあります。
例え一人であってもニーズに応えていこうという姿勢は大歓迎です。
しかし、情報環境がそれを許してはくれません。
 今後デイジー化への動きを促進していくためには大きく分けて3つの課題が考えられます。
 その1つは図書館や市(行政)の責任です。
館や市は、提供している文字や画像情報について、地域に住むすべての人がそれらの情報を共有できるような環境づくりを進めていかなければならないはずです。
そうした意味では今後、行政も情報保障の観点から積極的にこの問題に取り組んでほしいものです。
 2つ目はボランティアの問題です。
音訳ボランティアの皆さんは、音訳図書を作ることが最も大事なことですが、
行政(市や図書館、施設など)の動きと共に、ボランティア自身も情報環境づくりに一役買ってほしいのです。
ヨーロッパの、ある国では、ボランティアが国内の全ての視覚障害者宅を訪問して、
デイジー機器の操作を説明したと聞いています。
この国は日本よりデイジー化の着手は遅かったのですが、日本より2年も速く全面デイジー化になると聞いています。
それは視覚障害者側のデイジー化への体制が整ったからにほかなりません。
最初に述べた情報提供側の突然の事態と共に、
ユーザーが日々使っているテープレコーダーが壊れると言うことも起こります。
高速プリンタ同様、修理もできず、代替器も販売していないとなったらユーザーは途方にくれるに違いありません。
こうしたことに予め備える意味からも、
音訳テープ図書のユーザーに対して、デイジー図書への移行を積極的に勧めていかなければなりません。
視覚障害者の将来を見据え、よりよい読書環境を築くために、いろいろな側面からデイジー化を進めなければなりません。
もし、今だにカセットテープ図書しか作成していない音訳ボランティアの皆さんは、1日も早く軸足をデイジー図書作成に移していただくようお願い致します。
 そして実際の編集に当たっては、
より使いやすく、より聞きやすいデイジー図書を作るための技術をハード、ソフトの両面から身に付けていただくようお願します。
 私は全国で作られている様々なデイジー図書を利用していますが、
その中には、ただ単にデイジー化しただけと言わざるを得ない図書も多く見受けられます。
これではアナログデータがデジタルデータになっただけのことで、
デイジーの良さは発揮できません。
 是非、デイジーの特性を十分生かした質の高い図書作成に力を入れて下さい。
最後の3つ目はユーザー側の問題です。
デイジーの特性を理解し、デイジーならではの使い方を習得する努力をすることで
テープよりも格段に便利で聞きやすい図書であることが分かるはずです。
カセットテープ図書を利用したくても世の中から媒体や機器が姿を消してしまうのは必至です。
その時になってあわてないためにも今から、機器の操作を練習し、音訳図書をより楽しく便利に利用できるような環境にするよう自ら心掛けていくことが必要なのです。(ここにはボランティアや仲間のサポートが必要ですが。)
 もし、デイジーの特性を生かした聞き方や、図書の作り方を知りたいと思われた方は当方まで連絡下さい。
 連絡いただける方は、下記の注意を確認の上、問い合わせは、こちらへお願いします。なお、アドレスの最初の4文字である、
catsが、かなで書いてありますので、アルファベット小文字に直して送信して下さい。よろしくお願い致します。

注意:メールはテキスト形式でお願いします。
題名は必ず「デイジー図書についての問い合わせ」として下さい。

 
 


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