「視覚障害者と音サイン


静岡県内を走る東海道線の様子が最近大きく変わりました
が、ご存じでしょうか。
 長い間親しまれたボックスシートスタイルの電車が姿をを消し、ロングシートを主体とした新型車両にほとんど代わりました。
新型車両はコンピュータ制御されているのか、停車、発射時の動きも大変スムーズで、走行中のゆれも少なくなり、乗り心地は非常に良くなっています。 この車両の投入は今年3月のダイヤ改正時からです。
これに合わせて車両編成も3両連結が増え、また運転区間も浜松、掛川間や浜松、静岡間といった短区間運転が増えています。
その一方、浜松熱海間のような長距離走行が減ったためか最近の車内はかなり込んようになりました。
ところで、今回の新型車両導入で私が大変困っていることがあるのです。
それは乗降時のドアの開閉音がほとんど聞こえなくなってしまったことです。
 今までの車両では開閉時にドアの動作音がしていたのですが、新型車両ではほとんど聞こえません。
車内では開閉時に電子チャイムが鳴りますが、外には全く聞こえま
せん。
そのためほーむで待つ私にはドアが開いたことが確認できなくなってしまったのです。
視覚障害者にとって音は周囲の環境や現在の状態を把握するうえで極めて重要なファクターです。
 静音化は晴眼者にとっては歓迎すべきこともありますが、視覚障害者にとって音は行動を決定するためのサインとしてなくてはならないものです。
 どこの路線だったか、乗客の希望に寄り車内を静かにするため停車駅のアナウンスを無くそうという意見も出たということを聞いたことがあります。
最近の車両は車内に電子案内板があるので、それを読めば済むということのようでした。
 しかしアナウンスが無くなったらどうでしょう。
視覚障害者には今どこを走っているのか、次はどの駅なのか分からなくなり電車の利用は不可能となってしまいます。
 ドアの開閉音も電車利用には重要な情報源です。
 先日もドアの開くのを待っていると、突然「まもなくドアが閉まります」のアナウンスが頭上から聞こえ、あわててしまいました。
 列の一番前に待っていても停車中の電車から発する音(この音もかなり静かになりましたが)に消されてほとんど聞こえません。
私の後で列を作っていた人が誰一人教えてくれないという事実にもさみしい思いをしますが、そんなことは日常茶飯事で慣れています。
そうしたことより、車内にはチャイムを鳴らしているわけですから、ちょっと工夫して外にも聞こえるようにしてくれれば安心して乗ることができるのにと思わざるをえません。
 まだ、ドアの開いたことがわからないために乗り遅れたということこそありませんが、上のようなことはすでに何回か経験しています。
もちろんあわてて乗車口を捜していると、こちらですよと、電車を降りたらしき人から誘導されたことも数回あり、うれしく思うこともしばしばです。
 音による情報は必ずしも声による説明音である必要はありません。
ちょっとした音の工夫をするだけで安全も確保され利便性も向上するのです。
 例えば音響信号機も今は「鳴き交わし式」がほとんどですが、これも工夫の結果です。
横断歩道の手前と向こう側が同時に音が鳴ると無効側の音が聞こえ増せん。
交互に鳴らすことで渡る方向が確認でき、視覚障害者も正しく横断できるようになるのです。
でも、この音響信号機ももう一工夫ほしいと思うところが多数あります。
それはスピーカーの位置です。
信号を渡る場合、どうしても音の方向に進みがちです。
その結果、渡り切ったとたん柱に衝突するといったことも起こります。
スピーカーの位置を少し移動させるなど一工夫すれば、より安全に渡れるようになるのです。
これに似た例は建物の玄関などに設置しされている誘導チャイムにも見られます。
スピーカーが通過するドアの真上に設置してあれば問題ないのですがときどき横の壁や柱に設置されているものを見かけます。
これではうっかりすると壁に激突といったことにもなります。
最近家庭電気製品にもスイッチやボタンに「ビープ音」に類する「ピッ」という音を付加したものが増えています。
何も音がしないと操作が全くできませんが、1ヶ所ビー
プ音を加えるだけで使い勝手は大幅にアップします。
例えばボタンを押すごとに動作状態が変わるものがありますが、基本となる部分1ヶ所にビープ音を入れるだけで、そこから何回押せばよいかが分かるようになり、視覚障害者にも使える機器に早代わりするのです。
 そういえば最近、若い女性がサンダルの1種のミュールというにぎやかな履物で歩いているのをよく耳にします。
うるさいと言われる方もいると思いますが、あの音も視覚障害者にとっては安全ゾーンを確認するのに結構役立っているのです。
 今回は音環境についてあれこれ触れました。
音サインはいろいろと工夫されているものも増えている一方で、もう一工夫ほしいものも多くあります。
皆さんも是非関心を持って音サインを探し、機能の確認をしていただければと思います。

 


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