「視角障害者の画像情報について


 明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願い致します。 
 元日の午後、手元に届いた年賀状を読むため、私は、はがきを読み取り機にかざした。
この機器には、画像、文字、レイアウト、色彩などのボタンがあり、
それぞれを押すことで、それらの情報を音声で確認できるようになっている。
例えば文字ボタンを押すと、書かれている内容とともに、文字の大きさや書体(ゴシックや明朝、行書体など)を音声で知ることができる。
そのまま色彩ボタンを押すと文字のいろが分かり、レイアウトボタンを押せば、葉書のどの部分に文字が書かれているかも分かる。
画像ボタン押すと、プリントされている写真やカットなどの、およその内容を知らせてくれる。
ここでも色彩や、レイアウト、拝啓など、それぞれの情報を自由に選択することができる。
この機器は葉書だけでなく、書物や新聞、写真なども読み取ってくれる、なかなかの優れ物である。
ただ残念ながら、周囲の状況把握には使えない。
それは画像情報が刻々変化しているため処理が難しいようである。
もし変化しつつある情報を処理でひるようになれば、外出も自由にできるようになるかもしれない。
ユーザーとしての期待を伝えるべく、数日後メーカーに電話を掛けてみた。
ところが、まだ正月休みらしく相手がなかなか出ない。
しばらく鳴らしておこうとすると次第にベルの音が大きくなり私は目を覚ました。
正月のうとうとした時の初夢から)
 今年も多くの皆さんから年賀状をいただき有難うございました。
その中には1枚1枚丁寧に絵や文字を書いているものも多い。
そんな時、見えていれば「素敵な年賀状を有難うございます○」「なかなか達筆な字で」などと相手の方に伝えられるのにと、つい思ってしまう。
テレビを見ていても、無音で状況が把握できない画面では、この映像を見たいという衝動が湧き上がり、
見えないことは分かっているにもかかわらず、額をブラウン管密着させて何とか画像を見ようとしていることがある。
(でもすぐに「やっぱり見えないか」と、むなしさに陥り、障害を受容していない未熟さを再認識するのだが。)
 世の中の情報は、その大半が文字ではない、いわゆる画像情報である。
視覚障害者が、そうした情報を入手しようとすれば、それらを文字や音声に置き換えなければならないわけで、
アイボランティアの皆さんは、まさにその目的のために日々尽力していただいているわけである。
 IT機器の開発は、いずれ、こうした画像情報を自動的に変換して我々がアクセスしやすい文字や音声で提供してくれるようになるかもしれない
しかし、必要とする情報は時と場合、あるいは人によって異なるのは常である。
そうしたニーズに適切に応えられるようなシステムの開発は極めて難しいように思う。
初夢で見たような機器が開発されれば一人で図書館で読みたい本を探したり美術館で絵画を鑑賞したりもでひるようになり、
QOLを更に向上させる大きな力になることは疑うべきもない。
でも、大量の画像(情景)情報から、個が必要とする情報を取捨選択し、
リアルタイムにユーザーに提供するという作業は当分の間、機器には代行できないのではないだろうかと思う。
 最近、晴眼者と画像(情景)情報を共有しようとする試みが、行政やボランティアの協力によって広がりを見せつつあることは大変うれしいことである。
 例えばテレビでは、2011年のデジタル放送完全実施を前に、
総務省が「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」を立ち上げ、
視聴覚障害者向け放送の普及拡大に向けた、2017年度までの目標値を策定した。
(ちなみに2005年度の視覚障害者向け解説放送はNHK(総合で全番組数の3.5%、在京民放5局では、わずか0.2%であった。)
 また映画についても、音声ガイド付きのものが、各地で上映されるようになってきているし、
DVDの視聴でもぱそこんを利用することで音声ガイドつきで楽しめるシステムが動き始めている。
 静岡県西部でも、ユニバーサル映画と称して年に数回の音声ガイドつき映画が上映されており、私も大いに楽しませていただいている。
この他、演劇鑑賞、美術館鑑賞など、いろいろな試みがされており、それを楽しむ視覚障害者も増えつつある。
 そういえば私の所属するアイボランティアネットワーク静岡でも数年前、「表紙を読む」という講習会を開いたことがある。
これも本が持つ全ての情報を晴眼者と共有したいという思いを実現させるための一つであった。
 おかげさまで、その後皆さんの協力に寄り、表紙を説明している音訳図書に出会う機会も増えてきており有りがたいことである。
最近聞いた本も、実に上手に表紙を説明してあったため、
これから聞く内容への期待が高まり、聞き終わった後もいつにない感動を覚えたものである。
表紙はタイトルと同じく、その書物のテーマを表現している重要なファクターである。
 もし、まだ表紙を説明していないという音訳グループの皆さんがいれば今からすぐにでも始めていただきたいと思う。
 表紙と並んで文中にでてくる写真や絵についての説明も必須であることは当然である。
数年前だったが、文中の絵について「ここには茄子が2つ書かれています」とだけ説明した録音図書に出くわしたことがある。
ただ単に「茄子二つ」ではイメージのわかしようがない。
写真や絵の説明は難しいと言われる声も聞えてくるが、
皆さんが、その写真を最初に見たときにまず感じたことを主に伝えればよいのである。
あまりに簡単過ぎるのも困るが、微に入り細を穿つて説明するのも、かえって混乱し分かりにくくなる可能性もある。
説明の仕方は経験を重ねていくうちに何を伝えたらよいのかも分かってくる。時にはグループ内で学習会を開くのも良いと思う。
こうした情報は読者によっては、わずらわしいから不要という方もいるかもしれないが、
今後の録音図書であるデイジー規格は優れた検索機能により、聞きたくない部分は簡単に飛ばすことができる。
つまりデイジーだからこそ表紙や写真などを説明した、誰にも優しいユニバーサルな図書作成が可能となり、
その意義も出てくるのである。
 今まで述べてきた画像情報のUD化は音訳だけでなく、点訳図書や外出支援にも当てはまる。
 点訳図書の多くは原本の画像にほとんど触れていないように思うが、
これでは十分な点訳とは言えない。
視覚障害者の中には漫画を読みたいと思っている人も少なからずいることをご存知だろうか。
 漫画は絵だから視覚障害者には無理だと言うのは全くの間違いである。
かと言って、吹き出しだけ読んだり、点訳したりしても何もおもしろくない。どのようにして漫画のおもしろさを伝えるか、そんなことを考えるのも楽しいことになると思う。
 外出支援においても周囲の情景をいかに説明するかは、重要なことである。皆さんが眼にしている状況をいかに適切に知らせていくかは、外出の喜びに直接関わる重要な要素なのである。
今年は是非、画像(情景)をいかに説明したらよいかをキーワードに更に質の高いボランティア活動を目指して尽力いただければ幸いである。
 本内容への問い合わせなどは私まで連絡下さい。
 連絡いただける方は、下記の注意を確認の上、問い合わせは、こちらへお願いします。なお、アドレスの最初の4文字である、
catsが、かなで書いてありますので、アルファベット小文字に直して送信して下さい。よろしくお願い致します。

注意:メールはテキスト形式でお願いします。
題名は必ず「「視角障害者の画像情報について」の問い合わせとして下さい。


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