「私が感ずる最近の若者の声掛け事情」


3月に浜松に出掛けた時のことです。
私は買い物を済ませて、駅へ戻ろうと新しくできたばかりの信号を渡っていました。
この信号は、バリアフリー化推進のために埋めてしまう横断地下道の代わりに新設されたものです。
いずれ音響信号機になるのですが、この時はまだ工事中のため未設置でした。
しかも幅員がかなりあるため横断歩道は長く感じます、
その上、この横断歩道は直角ではなく、斜めに敷かれている(歩車分離式ではありません)ので、正しく反対側に渡るのは、けっして容易ではありません。
この日も杖を振りながら周囲の状況把握に気持ちを集中させ反対側の歩道を目指しました。
なんとか渡りきり、歩道にうまく移れるかと思っていると、杖の先は工事用のフェンスにぶつかりました。
まだ歩道に入っていないので車道のはずです。
早くしないと車が動き出してしまい、大変危険です。
急いでフェンスに沿って人の声のする左方向へ進み始めましたが、数歩進んだところで今度はトラックのような物体に前を阻まれてしまいました。
その時です。私の光景を見ていたのか背後から「おじさん、こっち、こっち」と若者の声がしました。
私かなと思って一瞬迷っていると、急に私の腕が引っ張られました。
それと同時に「どこへ行くの」と声をかけてきました。
浜松駅と答えると「じゃあ、一緒に行ってやるよ」と有りがたい一言。
歩道も工事中で路面にはポールや柵があちこちにあり、回避用の点字ブロックも全く敷かれていないので大助かりです。
その上、若者からのサポートの申し出。心のバリアフリーを広げるチャンスでもあり断るわけにはゆきません。
それではとサポートをお願いし駅に向いました。
歩きながら、その若者にどこから来たのか尋ねると「学校が終わったので町へ遊びに来たとのことです。
どこの高校か聞くと「俺っちの学校は悪で有名な学校。だから、こういう新設をしなきゃあ」となかなかのものです。
改札口での別れ際に「またどこかで合ったら声を掛けて」と言いながら、名刺を渡すと
「すげえ、点字が書いてある」と感激の声。
「眼の悪い人を見かけたら、これからも声を掛けてね」と、名刺の裏に書いてある「サポート3レベル」を見せ、
「君はBestレベルだ。これからも頼むよ」と伝え、爽やかな若者と別れました。
 そして数週間後、今度は静岡での出来事。
こちらも駅の近くでの体験です。
用事を済ませた私は、両肩に荷物を掛け、更に左手で荷物を持って駅前の地下道を点字ブロックを頼りに歩いていました。
この地下道も大規模な工事が行われているため、来る度に様子が変っていて困ることがよくあります。
ただ静岡駅周辺の工事では回避用の点字ブロックが比較的よく敷かれているため助かることも多いのですが。
この日も誘導ブロックを頼りに足を進めていました。
ところが突然、杖の先は「カーン」と音を出して金属の壁に突き当たりました(この壁も工事現場を囲む囲いのようですが)。
私のあるいてきた誘導ブロックは、なんとそのままその壁の向こうに消えているのです。
仕方がないので、周りの人の流れにのって右方向へ歩き始めました。
その直後、左後方から「荷物を持ってあげましょうか」と若い男の人の声がしました。
雑踏の中なので、私かなと思いながらも聞き流して足を速めました。
すると更に近くで再び声がしました。
かなり重い荷物だったので一瞬渡そうかと脳裡を掠めましたが、いや今の時代、油断はできないと「大丈夫です」と断わり、
前より荷物を強く握りしめ、次のブロックを探してエスカレーターに向かいました。
すると「エスカレーターがありますが乗りますか「と先程の男性の声です。
どうも私のおぼつかない足どりを見て、後ろからついてきたようです。
「はい」と答えると「駅までですか、一緒に行ってあげましょう」とサポートの申し出、
けっきょく改札口まで送ってもらうことにしました。
別れ際に、なんとなく大学生風だったので尋ねると「広島大学の学生です。今は休暇で帰省しています」とのことでした。
最近いろいろなところで若い人から声がかかることが多くなったような気がしますが、それだけ私が年をとった証拠なのでしょうか。
私には、そればかりではないように思います。
 私は何年か前、いくつかの紙上で、学校教育に福祉教育が取り込まれるようになり、障害者から話を聞いたり、ふれあったりする機会が増えているので、
子どもたちが大人になるころには世の中も変るに違いない「心のバリア」も減るのではと書いた覚えがあります。
 国は今年度から、
今までのバリアフリー化推進要項を、障害者、高齢者のみでなく妊婦や子供連れなども対象とした、ばりあふりーユニバーサルデザイン推進要項にあらためて、
「心のバリアフリー」の改善にも取り組んでいくようです。
2005年の政府の調査では外出時に障害者や高齢者、妊産婦、子供連れなどを見かけても対応方法が分からず手助けできなかった人が49%いたとし、
これを2012年までに25%までにするという施策も含まれています。
是非机上の空論に終わらないことを願うばかりです。
点字ブロックがいくら敷設されても、音響信号機がいくら増えてもそれは成熟した福祉社会とはけっして言えないのです。
 皆さんの更なる啓発をお願いします。

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