「郵便物と点字表示」


視覚障害者の中で点字の読み書きのできる者は役1割とも言われ
マイノリティーな存在になっています。
これは青壮年期以後の発症の増加や情報入手媒体の変化などが大きな原因となっており、やむを得ない側面もあるわけです。
 しかし、点字は視覚障害者の文化そのものであり、情報保障の骨格をなすものなので、けっして疎かにしてはなりません。
 私の手元には毎日数十種類の音訳あるいは点訳図書が届きますが、それぞれの点字表示はどうなっているでしょうか。
 まず差出人名(図書館などの施設名)ですが、
封筒で送られてくる点字郵便物の表面には、ほとんど点字の表示がされていないのが現状です。
では貸し出し方式の点訳図書や音訳図書はどうでしょうか。
これらの図書は利用後に返送しなければならないため、
ほとんどのものが宛名カード方式であり、
返信時には宛名カードを裏返して投函するものなので、
裏面(返信面)に、それを示す何らかの点字表示がされているものがほとんどです。
 何らかのと書いたのは、必ずしも適切に書かれているものばかりではないと言う事です。
例えば、「かえり」などというのは、その典型です。
確かにそれで返信面の判別はできますが、
これではどこから送られてきたものか分かりません。
返信面の点字表示は、誤返送を防ぐために重要なものですが、実はそれだけではないのです。
 前述したように私のところには毎日多数の郵便物が届きます。
受け取った郵便物は校正を頼まれた録音物であれば早く聞いてチェックしなければならないし、
全文読破に時間がかかるものは、まずコピーをするものとして、
また近日中に必要としている資料であれば、パソコンなどで編集するグループに分ける
といった具合に受け取った郵便物は、必要度や処理方法によっていくつかに分類します。
その際にインデックスとなるのが封筒表面や宛名カード裏面に書かれている点字です。
 点字表示が何もなかったり、適切な表示がなされていなかったりすると分類作業にけっこう手間がかかることになります。
点字物は封筒を開ければすぐそれが何なのかが分かりますが、
音訳図書の場合は再生機器にセットして確認しなければなりません。(郵袋にそれぞれ特徴があるため、見当がつくものもありますが)
これは大きな情報バリアであり、UDに反するものです。
ではどのようにするのが良いのでしょうか。
 まず封筒の表面と宛名カードの返信面には必ず差し出し施設名(図書館名など)を表示して下さい。
 宛名カードの表面(おもてめん)に点字で人名を書いてあるものがありますが、これは不要です。
点字の読める人にとっては、便利かもしれませんが、
点字を読めない人にとっては、両面に点字表示がされていたり、
表面(おもてめん)のみに点字表示がされていたりすると、どちらが返信面か分からなくなるため何も書かない方が良いのです。
( 宛名カードの点字表示は返信面のみに書くのが標準です。) 
 また、返信面に点字表示のないシール(宛名シールとは別に)のようなものが貼られているものを時々見かけますが、
これも良い方法ではありません。
多分点字の読めない人への配慮だと思いますが、
薄っぺらなシールを頼りに裏面を判別するより、点字のある側を探す方がよほど分かり易いはずです。
そもそも、そのシールの示す意味の分からない人にとっては、それが何を示す印なのか分からず混乱のもとです。
 私の住む袋井市では「つくしの会」の方々が課名を書いた点字シールを市役所に届けてくれてあるため、
「しあわせ推進課」(福祉関係の課名)から届く文書の封筒には、その点字シールが貼ってあり
識別に大変助かっています。
 では施設名の表示がされていれば十分でしょうか。
 実はもう一つ重要な情報が必要なのです。
  それは図書名などを示す点字です。
 ユーザー毎の宛名カードに、その都度、図書名を書くことは煩雑でありほぼ不可能ですが、
定期的に送る情報誌(雑誌や広報など)については返信先名に加えて雑誌名を書いて下さい。
雑誌名を書くと、他の図書の郵送には使えないため宛名カードが増えてしまうと言う声を聞きますが、
郵送物やユーザーの管理にはかえって便利になるはずです。
 宛名カードで書名が分かれば目的のものを探しやすくなり、
また返送時に誤って別の郵袋に入れてしまうということも防げることになります。
では次に、郵袋内部のテープやCDの点字表示はどうでしょうか。
私の手元に届くテープ図書について見ると、
ケースもしくはテープに書名が表示されているものは約6割です。
テープ、ケースの両方に表示されているのがベストですが、
少なくともケースには表示してほしいものです。
最近はテープに代わってCD図書が増えていますが、
こちらはケースの表面積が大きいためほとんどのCD図書に書名が点字で表示されています。
 表示スペースが広いため、書名や著者名、蔵書施設名や団体名などを略さずにフル名表示されていて大変助かります。
 ただ、意外と多いのが点字表記の誤りです。
左右が逆に書かれていて書名の確認に苦労したものもありますが
これは論外としても、一部の点字の誤り、分かち書きの誤り、マス空けの全く無いべた書き表示、
上段と下段で180度点字表示がずれているものなど読みにくいものは結構多くあります。
 特にびっくりするのは、
点字図書館など視覚障害者関係施設から送られてくるものの中に、う列長音などの誤りがあったりしてびっくりと言うよりがっかりすることさえあります。
 毎日配達される郵便物の分別に、苦労している視覚障害者はたくさんいます。
 点訳、音訳図書の郵便物だけでなく全ての郵便物に点字表示がされていたらどんなに助かることでしょう。
 前述した袋井のつくしの会の活動を参考に、皆さんそれぞれが関わる場面で、点字表示の啓発や実践をお願い致します。
 今回は郵袋を中心に点字表示について触れてきましたが、
点字は晴眼者と情報を共有する上で音声と共に絶対に欠かすことのできないツール(失礼)ものです。
幅広い知識に裏打ちされた実践こそ、質の高いボランティア活動なのです。
最後になりましたが、
前述したように点字の読み書きができる視覚障害者は少数派です。
Ud(ユーディー)を考えれば読めない人への配慮も欠くことはできません。
これについてはまた稿をあらためて触れたいと思います。
では皆さんの今後の啓発活動に期待し失礼致します。
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