ボスの遠聞近触 10 「読みたい時が旬。常に視覚障害者の視点に立った活動を」


 今回は、やや辛口になりますが、最近ボランティアの支質について考えさせる事がいくつかありましたので少し書かせていただきます
 私は15年前に「アイボランティアネットワーク静岡」と言う連合体を設立しました。
 今年は準備委員会から数えれば17年目の年となります。
 15、6年前、静岡県の大半の点訳ボランティアは点字板やパーキンスタイプライターなどを使って、紙に1点1点、1字1字、点訳するのが主流でした。
 点訳も音訳もデジタルとはほとんど無縁でしたので、各地域で作成された図書は地元で利用されるのみで他地域のユーザーに情報提供されることはほとんどありませんでした。
外出支援もガイドヘルパーのみで他地域への移動は必ずしも自由ではありませんでした。
 こうした状況では視覚障害者の読書環境や外出環境はなかなか改善されません。
 そこで、県内の点訳、音訳、外出支援などのボランティアグループの代表が発起人となり、「静岡県アイボランティアネットワークづくり推進委員会」を立ち上げ、ボランティアグループの連合体設立への活動を始めたのです。
 そして、まず情報を共有し、作成された図書を有効に利用すると共に、ボランティアの有する時間資源を有効に利用するため重複製作をなくすなどを目的に「ネットワークだより」の発行を開始しました。
そして2年後の1994年に「アイボランティアネットワーク静岡」を静止期発足させ本格的活動をスタートさせました。
 点訳作業では、主軸ををいわゆる手打ち点訳からパソコン点訳に移していくため、当時、代表的な点訳ソフトであったBASEを使って、パソコン点訳講習会を各地で開催し、多くの皆さんをパソコン点訳に導きました。
音訳についてはデイジー再生機の試作機を用いた世界でのフィールドテストに静岡県の団体として協力。
デイジー講習会も早期に開催し、将来への基盤作に着手しました。
ガイドヘルプについては地域を越えた支援ができるようにと、本会独自で誘導部を発足させ、日本財団の助成を受けて、県内各地でガイドボランティア講習会を開催しました。
 現在では点訳作業のほとんどがパソコン点訳となり、自動点訳ソフトなども導入してスピーディーナ点訳が可能となっています。
また音訳図書もでじたる化により晴眼者と同じような感覚で本が利用できるようになりました。
特にインターネットを活用すれば点訳、音訳などの図書がいつでも自分独りの力で自由に利用することが可能となってきました。
外出支援もIBMの社会貢献活動としてJBOSが設立されたため、本会も2年目から参加し、
全国の視覚障害者の外出ニーズに応えてきました。
 全国に例を見ないアイボランティアノ連合体「EVN静岡」が、こうした様々な活動を今まで続けてこられたのもボランティアや企業、団体そして多くの皆さんのおかげと感謝しております。
会の活動目的の中には「1 視覚障害者のニーズに対する対応の迅速化。2 図書環境充実の推進。3ボランティアの効率的な図書作成の推進。」などがあります。
 今後もアイボランティアの資質向上と視覚障害者の情報環境改善のため、各種研修会や講習会など様々な事業を実施していきたいと思っています。
 会発足当時、遠隔地との情報交換の主流はパソコン通信やアナログ電話でしたが、その後インターネットが爆発的に普及し社会のグローバル化と高速化により情報環境は大きく様変わりしました。
視覚障害者の情報環境や移動環境も、こうしたIT環境の変化を受けてニーズもますます多様化してきています。
 そこで、こうした状況に適切に応えてもらうため、私はユーザーの視点に立った情報保障について、研修会や講演会など様々な場面を通していろいろ提案して参りました。
例えば
・録音図書のアナログからでじたるへの早期切り替え。特に録音雑誌は1日も早くデイジー化すること。
・音訳図書も点訳図書にも、表紙や写真、絵などの賀状情報については説明を加えること。
・点訳や音訳などの文字変換活動では重複製作は避けること。
・外出支援では環境情報を十分に伝えること。
・IT機器(特にパソコン操作とデイジー機器)の操作支援の必要性
・音サインは音の種類、音色、音量、設置場所等々、利用当事者への十分な配慮をすること。
・ユーザーのニーズには適切に、且つ迅速に対応すること。
・あらゆる場面で視点をユーザー(視覚障害者)に置くようにすること
・異なる、より多くの場面で、より多くの異なった見え方のシミュレーション体験を行うこと。
・声かけの地域への啓発をすること(サポート3レベル)
・あどばいすは当事者から聞くこと。その際の当事者は誰なのかをしっかり見極めること。
などなど。さて皆様の周りではいくつの項目を実践しているでしょうか。
 実はボスの遠聞近触9では郵便物の識別に対する点字の必要性についても触れました。
 そうしたところ、早速、宛名カードの点字を張り替えたり、雑誌名を加えたり、また封等に点字表示をするなどの改善に取り組んでいただいたグループや図書館が見られました。
この取り組みは点字の読める全国の視覚障害者に必ずや歓迎されることと信じており、これこそがネットワークの存在意義の1つであると確信しています
 情報保障は晴眼者と時間差なく同じ情報が入手できるようにすることが根本です。
今、知りらい情報は、まさに「今」なのです。
後回しにする姿勢は質の低いボランティアにほかなりません。
 つい先日ある人から電話があり「理療科関係の本を読んでもらえるところはないでしょうか」との電話を受けました。
その地域は数100人も会員がいる音訳ボランティアグループが活動しているところでしたので不思議に思いました。
すると「私たちのグループには理療化の本が読める人はほとんどいない」とけんもほろろに断られたとのことです。
確かに理療科関係の図書、特に東洋医学書は難しい漢字がでて来るので読みにくいかもしれません。
でも希望は対面サービスとのことでしたので、それならユーザーに聞きながら、あるいは辞書を横に置いて調べながら読むことだって可能です。
もちろん西洋医学書ならそんなに難しくはありません。
もし自グループで無理なら他のグループに依頼する。など対応方法はいろいろ考えられるはずです。
ユーザーのニーズを実現させようと言う姿勢がなければ常法保障は成り立ちません。
 アイボランティア活動は人が相手です。
駅や講演をきれいにするボランティアとは違うのです。
依頼する人の思いを受け止めその思いを適えるための心を持ってほしいものです。
晴眼者は、見たいと思えば、また読みたければ、そして出掛けたいと思えば、いつでも自由に自分の意志で、それを適えることができます。
 視覚障害者だからと言って「待て」や「無理」を強いるのは本人にとってあまりにも厳しい現実ではないでしょうか。
 EVN静岡発足当時、ある研修会の席上で視覚障害者から「読みたい時が旬。
それを適えさせてほしい。」と発言がありました。
これこそ今も変わらぬEVN静岡のねらいです。
「今、その時」「旬」を実現するためにどうしたらよいか、是非考えてみてほしいものです。

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