視覚障害者用情報機器あれこれ(その1) (99年7月)
Q:貴方 D :増本
Q 先日のJBOSの旅で、ある視覚障害者が「文字が読めなくなって困るんですよ」と話していましたので、「今はパソコンで本が読めるそうですよ」と教えてあげました。すると「どんな機械ですか?どこで買うんですか?」などといろいろ聞かれてしまい、困ってしまいました。そこで今回から何回かに分けて、最近の視覚障害者情報機器について、いろいろお聞きしたいと思います。
D 自分の周りに情報機器に関心のある人がいないと、こうした情報が全く入らないことがよくありますからね。知っていると知らないとでは視障者のQOLに大きな違いが生じてきます。この欄を読んで、ぜひ皆さんから視障者に情報提供をしていただきたいと思います。
Q 今回は、まず前述した方のような場合に、どんな機器があるのかを教えていただきたいと思いますが。
D 最近、視障者に大変喜ばれているのが活字読み上げシステムです。
Q それは、どんなシステムなんですか。
D パソコンに接続したスキャナという装置で本などに書かれた文字を読み取らせ、その内容を音声で読み上げるシステムです。
Q 視覚障害者にとって夢のシステムが実現したわけですね。どんな文字でも読み上げてくれますか。
D なかなかそうはいきません。手書き文字
や装飾文字などは全く読めません。
Q ということは明朝体やゴシック体で印刷されたごく普通の活字ということですね。
D もちろん、かな漢字だけでなく英語や数字なども読んでくれます。
Q 読み上げ精度はどうですか。
D いろいろな条件で変わりますので、いちがいには言えません。例えばスキャナの性能とか、印刷の状態、文字の種類や大きさ、全体のレイアウトなどなど。1頁ほとんど間違いなく読んでくれることもあれば、ほとんど内容が分からない場合もあります。
Q じゃあ、あまり実用的でもないですね。
D いえいえ、そんなことはありません。普通の書物であれば十分使えるものです。
Q 本以外にどんなものが読めますか。
D 例えば、公報や水道料金などの市町村からのお知らせや、ダイレクトメール、またファックス用紙、貯金通帳、名刺などなどあらゆるものが対象になります。
Q 色も読み上げてくれるとか聞いたことがありますが。
D 読み上げソフトのなかには色の割合や色のレイアウトなども読み上げてくれるものがあり、女性には大変喜ばれています。
Q ハンカチや服装などの色が分かれば外出も楽しくなりますよね。
D ソフトの話が出ましたので、ここでシステム構成についてお話しましょう。システムに必要なものはソフト、スキャナ、パソコンの3つです。
Q ソフトも何種類かあるようですね。
D 視障者用に開発され市販されている活字読み上げソフトには、「ヨメール」「マイワード」「よみとも」の3種類があります。システムを考える場合には、まずソフトをどれにするのかを決める必要があります。
Q これらのソフトはそれぞれどこが違うのですか。
D キー操作や機能では細かな部分でかなり違いはありますが、読み上げソフトとして全体的に見た場合はあまり大きな違いはありません。強いて言えば、「ヨメール」が先程述べた色認識の機能が充実していることぐらいです。「よみとも」には英文を読ませるためのプログラムが入っていますが、聞きやすいものではありません。他のソフトも結構英文読みしますからね。
Q となると、どれにしたらよいか迷いますが。
D 利用する人のニーズとそれぞれのソフトが持つ機能を突き合わせることが大事です。最後にはその人の好みということになるかもしれませんね。
Q ソフトが決まったら、次は?
D パソコンとスキャナの選択になります。スキャナは卓上型と携帯型があります。ソフトによりスキャナが指定されていたり、動作確認がされていなかったりしますので、購入時には各ソフト推奨のものを確認する必要があります。
Q 携帯型スキャナはノート型パソコンと一緒に使うのですか。
D そうです。携帯型はペンスキャナと呼ばれ、子供の箸箱のような形をしています。ノート型パソコンに接続することで、外出先でも文字を読むことが出来るようになります。会議などに出席することが多い人には大変便利ですね。
Q 次にパソコンですが、どのメーカーのものでも良いのですか。
D 原則的には、Windows 95あるいはWindows 98が動作するパソコンなら何でも良いのですが、スキャナと同じように動作確認がとれているものが一番無難です。ただし、最近はパソコンのモデルチェンジが激しく、また同じモデルでも時期により使われているチップ(パソコン内部の小さな部品)などが異なったりして、全てのパソコンをチェックすることは不可能な状況です。
Q それは困りますね。参考までにDさんならどれを奨めるか教えて下さい。
D 私が現段階で推奨しているのは、IBMのパソコンです。少し前まではNECの98系を奨めていましたが、現在は受注生産に近い形で2モデルが作られているだけで、いつ生産が完了してもおかしくない状況となっています。どうしても旧モデルを欲しいという方以外はIBMを奨めています。でも、これもあくまで現時点での見解です。今後の状況により変えていきます。いずれにしてもパソコンは高価な機器ですので、使用者のニーズをじっくり聞いてその時点で最も適した機器を購入することが必要となりますね。
Q もう残り時間がなくなりました。最後にどの位の費用が必要か教えて下さい。
D ソフトが10万円前後で、スキャナが3万円程度です。パソコンはさまざまなものがありますので財布とも相談しながら決めて下さい。
Q では今回はここまでにします。また次回によろしくお願いします。
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