CATSのボスの遠聞近触 14 「触地図が街ぶらを可能に?」


私は数ヵ月前、東京で開かれた、視覚障害者の歩行支援システムの利用可能性に関する成果報告会に参加しました。
ここでは大きく2つの分野に関する研究報告がなされました。
1つはGPSや画像を使った位置検出やナビゲートシステムに関するもので、
もう1つは点図触地図出力や経路に絞った地図の出力など、触地図自動生成システムに関する研究報告でした。
 私は外出する際や歩行中に周囲の人に目的地の位置や道順について尋ねることがよくあります。
 また知らない場所に出かける際も、事前に知人やインターネットなどから目的地周辺の情報や道順を入手し、
過去の経験ともオーバーラップさせながら頭の中に自分なりのマップイメージを作り出かけます。
 ところがそれを頼りに実際に歩いてみると
目的の場所になかなかたどり着かないなど、自分のマップイメージにかなりの誤りがあることに気づくことがしばしばです。
 これは耳で聞く音声情報を頼りに、勝手に自分でそのイメージを作り上げてしまうと言うところに問題がありますが、説明してくれる側の時間や方向、距離などに対する感覚の違いもけっこう大きな影響を及ぼします。
例えば「地下道を地上に出たらすぐ右に入り口があります」と言われて、現地に行くと、数10メートル歩いた右だったり、
「10分ぐらい先です」と教えられて歩くと、数分で目的の場所に着いたりと、けっこう苦労することがあります。
しかし2次元あるいは3次元の情報を言葉だけで性格に相手に伝えたり、
また耳からの情報だけで正確なマップイメージを作ったりすることは不可能に近いことです。
 こうした間違った地図イメージを修正するのに役立つのが触覚による模型や触知図です。
触知図は面情報として提示できるため、地域の道路構成や建物の位置確認などにも大変役立つツールです。
 しかし一部の施設内に掲示されている触知図を除けば、そのほとんどは非常に広範囲(世界地図や日本地図また県全体など)を1ページもしくは見開きの2ページに示す程度のものしかありません。
 個人の外出ニーズに合った狭い範囲の道路状況や建物位置などを表示する触知図はほぼ皆無と言ってもよいでしょう。
 インターネットサイトには地図データをダウンロードできるところもありますが、個人で点字プリンタを所有している視覚障害者はほとんどいないため現実的ではありません。
 今回のセミナーではこうした触地図を個人のニーズに合わせて作成し、外出移動時の補助ツールとして使ってもらおうと言う研究報告がされました。
 この触地図では大手の地図メーカーが有料提供している一般地図を元データとして利用するため縮尺や指節の位置、交通機関の経路など性格に表示することができます。
しかもこのプロジェクトでは個人のニーズに合わせた必要なデータのみを触知図化して提供してくれます。
 手元に触地図があれば、事前に目的地周辺の環境や道順を調べておくことができるし、また紙への印刷のため簡単に持ち歩け歩行中の利用も可能となります。
ただし現時点では研究費の問題でこの触知図作成地域は関東地区とプロジェクトチームが在住する新潟県に限られています。
またこのシステムではあらかじめ地図作成を申し込み、作成後に送ってもらうシステムのため手間と時間がかかります。
 話は変わりますが昨年11月から今年3月にかけて、カーボンナノチューブ高分子アクチュエーターと言う物質を利用した薄くて軽いフィルム状点字ディスプレイの展示発表が数ヶ所で行われました。
 今後このシート状の点字ディスプレイが実用化すれば、触知図作成を依頼することなく、ネット上の地図を、いつでも自由に参照できるようになるのではと思います。
 そうなれば、前々号のこの欄で書いた「私の街ブラ」実現にもつながってきます。
 そんな日々がおとずれることを夢見ながら、今日も杖の先で迷路の出口を探す私です。

皆さんからの連絡お待ちしています。
内容に関する問い合わせなどは私まで連絡下さい。
 連絡いただける方は、下記の注意を確認の上、問い合わせは、こちらへお願いします。なお、アドレスの最初の4文字である、
catsが、かなで書いてありますので、アルファベット小文字に直して送信して下さい。よろしくお願い致します。

注意:メールはテキスト形式でお願いします。
題名は必ず「ボスの遠聞近触についての問い合わせ」として下さい。


前のページへ ボスの遠聞近触 13 「サピエのスタートと、視覚障害者へのITサポート」
ボスの遠聞近触 15へ 
ボスの遠聞近触の項目選択ページへ
みんなの広場に戻る
トップページに戻る