CATSのボスの遠聞近触 15 「マルチメディアデイジーとサイトワールド」


10月に行われたデイジー研修会に参加の皆さんお疲れさまでした。
デイジー(DAISY)は当初、印刷した文字の読めない障害者、つまり視覚障害者の電子録音図書の利便性を高めるためとして解発されました
(Digital Audio Information SYste)。
しかしその後マルチメディアデイジーと呼ばれる第2世代の規格になり、その骨頂のマルチ機能により、今や文字を読むことが苦手な高齢者や障害者を含めたよ多くの人たちの様々なニーズに対応できるシステムへと成長しつつあります
(Digial Accessible Information System)。
次世代規格である「デイジー4」では、より多様な利用者に対応させるため、新たに動画との同期や日本語の縦書きとルビにも対応し、手話画像とのリンクにより聴覚障害者にも意義あるシステムになりそうです。
 先日グランシップで開催された、平成22年度静岡県図書館大会の第4分科会、図書館とユニバーサルデザイン 「電子書籍の時代がやってくる!」に参加しましたが、
そこで話の中心の一つとなったものが、iPadやキンドルと言った電子書籍リーダーでした。
キンドルは、現在のところ日本語の書籍は購入できないため馴染みが少ないと思いますが、
iPadは国内でも発売時に大きな話題を呼んだため、ご存知の方も多いと思います。
また皆さんの中には、すでにiPadなどの電子書籍リーダーを利用している方もいらっしゃるかもしれません。
実はこのiPadで採用している電子書籍のフォーマット(形式、構成)は、デイジーと互換性のあるEPUB(イーパブ)と言う規格なのです。
EPUBとは、アメリカのIDPF(大学や出版社、またメーカーなどが加入している団体)が開発した電子書籍のフォーマットで、
電子書籍の読み環境に適した機能と汎用性に富むため、今後世界の電子書籍の標準規格になるのではといわれています。
デイジーバージョン3.0で作成したマルチメディアデイジー図書であれば、
EPUBで読み部分のハイライトや、文字の大きさ、読み速度、背景色などを個のニーズに合わせて利用することができるようになります。
ただし、現在のiPadではタッチパネルでの操作が中心となるため、視覚障害者に充分使える仕様とはなっていません。
今後のバージョンアップでは解決することと思います。
 しかも次期のデイジー4では、EPUBのコンテンツが直接読めるようになるとのことで、
そうなれば、視覚障害者もiPadなどの電子書籍リーダーを使って、
晴眼者と時間差なく新刊書籍にアクセスできるようになり、
それをフルに利用することが可能になっていくことでしょう。
そうした時代の到来は、
IDPFの会長とDAISYコンソーシアムの事務局長とを1人の全盲者(ジョージ・カーシャ氏)が兼ねていることからも、ごく近いことではないかと期待しています。

 ところで、私は10月30日から11月3日まで
浜松市のアクトシティをメイン会場に開かれた、第3回国際ユニバーサルデザイン会議と、
11月1日から3日まで東京錦糸町の墨田産業会館で開かれた、
第5回視覚障害者向け総合イベントサイトワールド2010に参加しました。
そこで、これらのイベントの中で、私が関心を持った機器のいくつかを今回と次号に分けて紹介します。
 まず今回は、来年7月の地デジ完全移行に向け、視覚障害者の間で関心が高まっている音声ガイド付きテレビについて触れます。
これは最初にM社が発売したのですが
局名や番組名、放送時間など基本的操作に加え、
今までなかなか難しかった予約録画も音声ガイドで操作できると言うことで
視覚障害者の間に大きな反響を呼びました。
しかし録画リストが音声で確認できないなど、物足りない部分もあり後継機器の対応が気になっていました。
会場には秋に発売されたモデルが出展されていましたので、
早速チェックしてみました。
すると録画済みのリスト確認はしっかりできるようになっていましたし、
その他の部分も音声確認できる項目が増えていました。
ただしこの対応は現状ではDVD、HD一体型の大型モデルのみとのことで、
今後の小型サイズへの対応が待たれるところです。
 なおM社に続き、P社もこのタイプのテレビを発売しはじめているので、
こちらのブースにも立ち寄ってみました。
読み上げ部分など多少差はあるものの、基本的な操作だけであれば問題なく使えそうです。
完全地デジ化に向けて、視覚障害者もテレビ購入を検討している人も多いため、選択肢が増えたことは大変有難いことです。
しかしまだこの2社に限られているため、今後より多くのメーカーが対応してくれることを願っています。
 テレビには通常視聴する画面の他にデータ放送と言うものもあります。
これには番組に連動したものや補完的なものもありますが、
ニュースや天気予報など独立して放送しているものもあります。
上記のテレビではこの独立したデータ放送には全く対応していません。
この分野の研究は数年前からNHK技研が取り組んでいます。
当初見たものはあまり使いやすいものではなくまだまだ未完成と言うものでしたが、
今回出展されていたものは、メニューや文字データを音声と点字で出力できるものでした。
しかも市販されている点字ディスプレイに対応しているため、かなり期待の持てるシステムとなっていました。
これが実用化すれば、視聴覚障害者である盲ろう者もテレビが楽しめるようになるのではないかと、一人で感動してしまいました。
テレビは画像で情報を得る部分が多いツールですが、
視覚障害者にとっても第1の情報入手手段であることは、厚労省や日盲連などの調査によっても明らかです。
今後更にユニバーサルデザイン化が進み、誰にも使いやすいテレビが増えることを願って止みません。

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