CATSのボスの遠聞近触 16 「バーコードトーカーほか」


前号に続き国際UD会議とサイトワールドで関心を持った機器のいくつかを紹介します。
 時々視覚障害女性にも使いやすい調理器を教えてほしい、と聞かれることがあります。
今回のイベントではこうしたニーズに応えられると思われるIH調理器が、新しく参入したメーカーも含めて数社から出展されていました。
メーカーによって多少、操作性に良し悪しはあるものの、どの製品も温度設定や調理時間、調理の種類などを、貼付されている点字あるいは機械的スイッチの位置(押下の高さや回転角度など)や音声ガイドを頼りに、ほぼ独力で操作できる使用になっていました。
最近は炊飯器や電子レンジなどの調理器具も点字貼付や音声ガイドの付いたものが徐々に増えてきており、視覚障害による調理の不便さも少しずつ改善されてきています。
今後こうした配慮が、全商品になされるようになればと願っています。
 ところで私が会場で最も関心を持ったのがバーコードトーカーと言うシステムです。
 バーコード(Barcode)とは、縞模様状の線の太さによって数値や文字を表すもので、ほとんどの商品に印刷あるいは貼付されています。
ここにはその商品に関するいろいろな情報が収められています。
スーパーマーケットなどでレジの店員が、品物を機会にかざして購入金額を算出している光景は皆さんおなじみだと思います。
実はあれがバーコードの情報読み取りなのです。
ばーコードには金額だけではなくいろいろな情報が含まれているため、商品の売れ筋把握や在庫管理など商品マネージメントに広く使われています。
更にこのコードをインターネットを通してメーカーのデータにリンクさせれば、その物品に関するより多くの情報が入手できるようになります。
 このバーコード情報を音声化することができれば、視覚障害者の買い物時の商品選択や購入後の物品確認あるいは整理などに大いに役立つことになります。
私は以前からこの読み取り音声化システムの登場を首を長くして待っていました。
 実は視覚障害者への情報提供コードとして、何年か前にSPコードと言うものが解発され、行政などの一部の印刷物に導入されています。
SPコードとは、文字情報を内包した二次元コードの一種で、専用の読取装置をあてると音声で文字情報を聴くことができるものです。
これを読み取るには数万円から10数万円する特別な機器を購入しなければなりませんが、例え購入したとしてもSPコード自体がほとんど普及していないため、このコードに出くわすことはほとんどなく、購入した視覚障害者のほとんどが無用の長物として棚に鎮座しているのが原状です。
関係者は普及活動にも力を入れているようですが遅々として進んでいません。
一方バーコードは国内に流通する物品のほとんどに採用されています。
このバーコードを読み取って音声で情報提供してくれるものがバーコードトーカーです。
 実はバーコード情報を音声化してくれる機器は昨年発売されていますが、バーコードがある場所をしっかり確認し、カメラにうまく収まらないと認識できないため視覚障害者にとってけっして使いやすいものではありません。
 ところが今回体験したバーコードトーカーの試作器は、カメラの前で、缶ジュースであればそれをぐるっと1回転するだけ。
またカレーライスのやクッキーの箱のようなものであれば、それも1回転するだけでバーコードを読み取りそれを音声で知らせてくれるものでした。
つまりどこにバーコードがあるのかをほとんど気にする必要はないのです。
これを体験した直後「これはすごい、これぞ私が待っていたもの。
」と感動し、担当者に1日も早い製品化をお願いしてしまいました。
ただしこの試作器はPC用バーコードスキャナをパソコンに接続して認識処理をしていましたので、持ち歩きには適するものではありません。
スマートフォンや携帯にそのプログラムを取り込んだものも体験して見ましたが、こちらはすでに発売されている機器同様、バーコードをカメラフレーム内に性格に納めるとともにぴんとも合わせなければなりませんので、バーコード位置や方向が規格化されていない現状では、全盲者が単独で使うのはかなり難しそうです。
 このプログラムは最近ドコモ携帯用のアプリが、更に続けてWindows用も公開されたため、多くの視覚障害者がダウンロードしいろいろ試しています。
 私もいろいろやっていますが、現状では前述したような理由により、少なくともバーコードの位置が確認できるくらいの視力がないと独力でこれを読み取ることはなかなか大変です。
 でも触覚でバーコード位置が確認できるよう透明テープなどをどなたかに貼ってもらったり、バーコードとレンズの距離やカメラ角度などが固定できるような小道具を作ったりなど、皆さんいろいろ試行錯誤を重ねながら、なんとか簡単に読み取れるような方法はないかと研究しています。
 今後このバーコードトーカーが、屋内外で誰でもが手軽に使えるようにするためには、バーコードの位置や方向の規格化とともに、カメラのAFC(自動焦点機能)そして広角で写しても(バーコードが小さく写っても)読み取れる制度の高いプログラムや携帯電話の解発などが望まれるところです。
最後に出展会場ではなかったのですが、製品開発の報告として、携帯デイジー機器のみで視覚障害者の総合ネットワーク「サピエ」にアクセスして図書をダウンロードしたり、そのままストリーミング再生できるポータブルデイジー機の発表がありました。
これによりパソコンの苦手な方や、外出が多い方でもいつでも自由に本を検索して、それを聞くことができるようになり、前号で触れた電子書籍リーダーまがいの、デイジー図書リーディングスタイルが実現しそうです。
2月待つ現在、まだこの機器の発売アナウンスはありませんが、視覚障害者の読書環境もまた一歩進むことと期待しています。
 前回と今回、視覚障害者関連機器の最新情報を少しお伝えしましたが、こうした内容は視覚障害者の生活にとって大変重要だものです。
私は自ら実施している福祉講座をはじめ、様々な機会を通して情報提供を行っていますが、こうした情報が届いていない視覚障害者も多く見受けられます。
 是非皆さんの活動の中で周囲の視覚障害者にも新しい支援機器の情報を積極的に提供していただくようお願い致します。

皆さんからの連絡お待ちしています。
内容に関する問い合わせなどは私まで連絡下さい。
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catsが、かなで書いてありますので、アルファベット小文字に直して送信して下さい。よろしくお願い致します。

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