「視覚障害者支援で、まず考えたいこと」

 今回の内容は会員以外に多くの皆さんに読んでいただきたいものです。
 これは情報誌「ねっとわーくだより」の第40号(平成18年3月1日発行)の巻頭言に載せたものです。修正しないで、そのまま掲載します。

( 「ねっとわーくだより」巻頭言より)
 今回は、巻頭言連載のとりあえずのまとめということで、視覚障害者を支援する上で是非実践してほしい2点について触れることと致します。
 1 支援の視点は常に当事者に置くこと。
 このことについてはいろいろな角度から何度も触れて参りましたが、日常の生活や活動のなかでは、ついうっかりしてしまっているのではと感ずることがよくあります。それは己以外のものは全て「他」である以上仕方のないことでもあります。だからこそ、常に当事者とは誰なのかをしっかり見極め、その立場で思考し支援していけるように意識的に実践することが重要になります。
そのためには、模擬体験を繰り返し行うことです。
 当事者と全く同じイメージを再現することは不可能に近いことですが、シミュレーションを重ねていくことでより近いポジションに自分を置くことができるようになり、当事者により、近いイメージをわかせることが可能になるのです。それは適切な支援を実現するファクターとして大きな意義を持ってくるほとは間違いありません。
 具体的な方法はいろいろありますので連絡いただければアドバイス致します。
 2 視覚障害者支援は声掛けが原点。
 視覚障害者への「声掛け」の重要性も何度か触れて参りましたので、皆さんは日々励行していらっしゃることと思いますが、重要なことですので再度触れることにします。
 私は声掛けの段階を大きく3つのレベルに分けています。
 ワーストレベル:視覚障害者から声を掛けられても、そのまま知らん顔をして行ってしまう人
 グッドレベル:視覚障害者から声を掛けられると、それに応えてくれる人
 ベストレベル:自ら進んで声を掛け、情報提供や具体的なサポートをしてくれる人

 皆さんはどのレベルでしょうか(まさかワーストレベルはいないと思いますが)。
 私としてはベストレベルが大半であることを願っていますが、皆さんのなかには、声を掛けたいと思ってもなかなか行動に出れないという方もいらっしゃるようです。
 最近、新聞や雑誌などで視覚障害者への声掛けの記事を時々見かけるようになりました。そんな中で少し気になったことがあります。それは新聞に掲載された盲導犬ユーザーの話。そこには「困っている様子があったら声を掛けてほしい」とありました。もう一つはある情報誌に載っていたライターの話。そこには「ある視覚障害者から聞いた話として「視覚障害者を見かけたら、「なにかお手伝いしましょうか」と声を掛けてほしい」と書かれていたものです。
 この2つを聞いて皆さんはどう思われるでしょうか。
 晴眼者の方からよく聞かれることは「声を掛けても、それに対し何かをしてほしいと言われたら、どのように支援してよいか分からないので、声を掛けにくい」という話です。もしそうした方が大半だとすれば前述した声掛けはかなり勇気のいることであり、なかなか実践できないことにもなります。
 そこで、私はもっと簡単なことから始めてほしいのです。
 もし、視覚障害者とすれちがったり、追い越したりなどした場合は、通りすがりに「信号が青になりましたよ」とか「もうじき階段ですよ」と軽く声を掛けるようなところから始めれば良いのです。何かをしようとすると力が入り一言が出ません。
 まずは軽く情報提供するところから始めて下さい。それをきっかけに次回は一歩進めて、「大丈夫ですか」とか「お手伝いしましょうか」などの声掛けにと少しずつステップを上げていけばよいのです。ステップアップが無理な方は上記の声掛けだけ実践して下さい。傍からは困っているように見えなくても、ちょっとした情報を得ることでそれは大事な助けになり、大きな安心につながるのです。
 白杖を見たらとにかく一言。
 それによりどれだけ視覚障害者がほっとするか。それは、ときには独りで行動している視覚障害者の命を守ることにもなり、この上ない感動となるのです。
 視覚障害があってもそれを意識せずに生きていける社会。そんな世の中に少しでも近づくため「皆さんも「心のユニバーサル」を進めてほしいと願っています。


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