CATSのボスの遠聞近触 21 「久しぶりの街ブラ体験」



久しぶりの街ブラ体験です。
 私が日々利用している駅は今年の3月からバリアフリー化に向け、建て替え工事が行われています。改札口へ行くには工事現場を大きく迂回しなければなりませんが、迂回する動線上には点字ブロックを敷設していただいたため、安心して毎日歩くことができています。
ところが、その点字ブロックの配置特性に成れていなかった、ある仕事帰りの日、私は横断歩道上で方向を見失ってしまいました。
反対側の歩道に載ったと思い、誘導ブロックを探しましたが、なかなか見つかりません。
そこで元に戻ろうとして歩き始めた時です。年寄の女性と、幼児が何かしゃべっている声が聞こえてきました。
私が、その前を通り過ぎようとしたときです。
「ほら、見てごらん。眼の悪い人があるいているから。・・・」と、私の耳に、信じられないような言葉が飛び込んできました。
祖母のその言葉を聞いた幼児は、きっと、宇宙人でも見るかのような好奇な目で私を見つめていたに違いありません。
障害者を見下した、その言葉は、私に怒りと寂しさを一気に湧き上がらせ、一瞬、平衡感覚を失うほどのショックでした。
そう言えば、昔、生徒に歩行指導をしていたとき、通りがかった女性が、子供に向かって「悪いことすると、ああいう風に眼が見えなくなるよ」と言っていたことがありました。
もう一つ、信じられない話を紹介します。
 私が周囲の人の気配りの無さを感ずるのは、電車内とエレベータ内です。
前にも触れたことがありますが、今回もエレベータでの話です。
エレベータに乗ろうとボタンを探していると、丁度ドアが開き、2、3名の人がドアに向かって歩く足音が聞こえました。
そこで「上りでしょうか、下りでしょうか」と尋ねましたが、返事はありません。
仕方なく、そのまま中に入りました。
杖の先が、どなたかに触れ、私の身体も誰かに触れました。
けっこう込んでいるようで、「すみません」と言いながら、「どなたか5階のボタンを押していただけますか」とお願いしましたが、誰からも返事はありません。
でも、どなたかが押してくれたらしく、小さな音が聞こえました。
「有難うございます」と私。やがてエレベーターは止まり、ドアが開きました。
「何階でしょうか」と尋ねましたが、やはり誰も応えてくれません。
そこで再度「5階でしょうか」と声を出しました。
すると少し間が空いた後、奥にいた女性が「5階ですよ」と教えてくれました。
無事に目的階に付くことができましたが、頭の中は???でした。
 こんな話をすると「日本人は控えめだから」とか、どのように声をかけたらよいか、どのように対応したら良いかが分からない」などと言う人がいます。
確かにそうかもしれません。でも、上のような場面で、返事をするのに、どんなテクニック、どんな訓練が必要だと言うのでしょうか。
2年前、日本人の道徳心が世界的に賞賛されましたが、同じ環境にある者に対してはシンパシーが強いようです。
しかし異なった集団(国籍、人種、肌の色、言語などなど)、特に障害者への対応は極めて劣っているように思います。
その場を共有している他の人への気配りが、もう少しあっても良いのではと思うのは、私の我がままなのでしょうか。
昔、読んだ雑誌のエッセイにこんな話がありました。
筆者がある国に出掛けたときのレポートでしたが、年輩の女性が重たい荷物を背負ってバスに乗ろうとしていると、どこからともなく若者が2、3人掛けてきて、その荷物を後ろから持ち上げている光景に出会ったと言うのです。
ブータンの旅行記にもそれに似た話が載っていました。
車が段差を越えられなくて立ち往生していると、どこからともなく村人が集まり、車が通れるように段差を急作りし、作り終わるとどこかへ消えて行ったというのです。
精神的豊かさに裏打ちされた、GNHの国。日本も見習いたいものです。


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