CATSのボスの遠聞近触 22 「ITによる外出支援」



授業を終えた私は、午後のぱそこんサポートに向かうため、机上のディスプレイに向かって、手を左に振った。
「文書を上書きしますか」と聞いてきたので、再度、手を左に振った。
文書が保存されアプリケーションが閉じられた。
次いで、手を上から下に向けてゼスチャーするとPCの電源が切れた。
まずは食事である。
耳の後ろにハイテク骨伝導ヘッドホン(以後、ハイテク本とする)をかけ、左にキャリーバック、右手に白杖を持ち外に出た。
ヘッドホンからは、「前方、右20度、3メートルに乗用車、前方、0度、にメートルに自転車」と前方の情報が聞こえてきた。
このハイテクホンには左右に超小型カメラと超音波発信機が備わっており、前方に、どんな障害物や危険物があるのかや、その方向、角度、距離などを教えてくれる。
このまま前に進むと自転車に当たるようなので、身体を少し左に向けた。
「左側50センチに壁」との情報、壁と自転車の間を抜けて道路に出た。
ハイテクホンからの情報を聞きながら信号に向かった。
「あと5メートルで横断歩道、現在赤信号」と聞こえた。
このハイテクホンは、GPSやユビキタスシステムなどグローバルなネットにもリンクしているため、利用者の歩行速度や体の向きに合わせて、変化する様々な情報をリアルタイムに次々と提供してくれるのである。
電柱や看板、不用意に置かれている荷物なども的確にとらえ、知らせてくれる。
障害物に近づくとモノトーンの断続音が聞こえはじめ、接近するほど断続音の間隔がせまくなって、危険を知らせてくれる。
おかげで最近は、単独歩行中に何かにぶつかると言うことはほとんどなくなり、安心して歩けるようになった。
ただし、わずかな段差や小さな突起物の通知機能はまだ十分ではない。
我々は少しの段差や突起物でも転倒することがあるので、安全確保には白杖はまだ必須である。
いずれ機能はグレードアップし、白杖がシンボルケーんになる日も近いかも知れないと期待している。
信号を渡った私は、ハイテクホンと白状のコンビネーションで、歩道の障害物を避けながら、目的の食堂が入っているビルに近づいた。
あらかじめ目的場所を設定してあったので、ビルに近づくと、5メートル先、右手に入り口どあ」と聞こえた。
近づくにつれ、3メートル、2メートル、1メートル、右45度前にドア」と聞こえた。
ビルに入り、エレベーターの前に着くと、ポケットからスマートホンを取り出し、エレベーターに向けて、画面上部をタッチした。
「上りエレベーター確認」とアナウンスされたので、再度タッチ。「現在3階」とエレベーターの現代位置が聞こえた。
数秒後、スマホからチャイム音が聞こえ、ドアが開く音がした。
(チャイム音が手元で聞こえるため、最近は、エレベータの到着音を聞きのがすことがなくなり、置いてきぼりされることもなくなった。
エレベータ内に入ったが人の気配はない。
内部にある乗降ボタンはタッチ式で点字の貼付もない。
実はスマホには、中に入った時点で画面上に階数に対応した数字が表示されている。
そこで使い慣れたスマホ画面の数字をタップした。
「8」と聞こえたので再度タップ。これでエレベーターは8階に行くことになる。
エレベータを降り、いつも行く食堂へと向かった。
今日は何を食べようかとメニューを開くと、書かれているメニュー項目や、料理の画像などの情報が、ハイテクホンから聞こえてきた。
ハイテクホンがなかったときは、店員にメニューを確認したり、いつも同じものを注文したりで、ゆっくり自分の食べたいものをセレクトすることは難しかったが、今は自分の力で選ぶこともできるので、食事の楽しみが一つ増えたのである。
食事を済ませ、コーヒーを飲んで、新幹線に乗車するため改札に向かった。
切符を改札口に近づけると「あなたの次回の列車は13時40分、ホーム12番千」と聞こえた。
この駅の構造はほぼ理解しているため、駅員のサポートは不要である。
目的のホームに出たが、列車到着までは若干時間があったので、ハイテク本で販売機を探した。
販売機の前でスマートホンを振ると「ココアが好きのようですが、それでよいですか」と耳元から聞こえた。
スマートホンを通して私の好みを確認したようである。
ココアで良いため、スマホを下に振ると、ガチャンと音がして取り出し口に缶のココアが出てきた。
それをポケットに入れ、点字ブロック上を指定席車両のドアまで進んだ。
ドアの位置は誤差10センチでハイテクホンが教えてくれるので、安心である。
もちろん車内の指定席も正確である。
今日は12号車15列Aである。
座席に座り、時間が少しあるので、今朝の新聞と本日発売の週刊誌を読もうと、点字ディスプレイを地元の図書館にネット接続した。
まずは、私へのお薦め図書一覧が表示された。
これも過去の私の利用データと参照して表示しているらしい。
今回は新聞、雑誌などで、人差指と親指でページをめくる動作をすると分類一覧に変わった。
いくつか操作してまず今朝の新聞のタイトルを表示させ、その中で興味を引く記事を表示させた。
墨字記事は瞬時に点字に変換されて、点字表示される。
もちろん音声を使えば活字そのものを読ませることができ、文字そのものの確認もできる。
記事を読んでいるうちに睡魔に襲われいつしか眠ってしまった私は、「お客さん、終点ですよ」の声に飛び起きた。
眼を覚ました私は、膝の上にある点字ディスプレイを探した。
「何かお探しですか?」と聞かれ、「ここに・・・・」と応えながら、座席前のテーブル上の飲み物をとろうとした。
「あれ、ココアもない」
確かホンを読んでいたのにと思ったが私の前にはキャリーバックと白杖だけしかない。
「そうか、ひょっとすると今のは。・・・夢??!!。」
 これから10年後ころには、こんな環境のいくつかが実現していてほしいものだ。
そう言えば以前この欄(ボスの遠聞近触 1)に、これに似た初夢を書いたことがあるが、そのいくつかはすでに実用化されている。
今後が楽しみである。 


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