CATSのボスの遠聞近触 23 「ICTサポータ養成の必要性」


視覚障碍者の情報環境は、私が視覚障碍者支援活動を始めた数10年前から比べ、まさに革命的な変化を遂げました。
 その原動力となっているのは、言うまでもなくデジタル技術の長足の進歩にほかなりません。
 音訳や点訳も今はデジタルデータ(デイジーなど)が中心となりました。
データのデジタル化により、インターネットでの遠隔地への情報提供が実現し、場所や時間にとらわれない、いわゆる「どこでも、いつでも」の読書環境が実現しました。
 音訳図書もデイジーシステムにより、「しおり」の使用や、検索、「斜め読み」などなどが可能となり、晴眼者の読書スタイルに匹敵するほどの、閲覧システムが実現しています。
また電子データのため、書物としての物理的スペースは無く、データ保存のためのメモリ媒体のみのため大量のデータを持ち歩くことが可能となりました。
私も以前のような重い教科書や参考書を持ち歩く必要もなくなり、逆にデータ化した大量の参考資料を用意できるため、出先での活動も大変しやすくなりました。
しかし、こうしたデジタルデータを利用するには、各データに対応したICT機器の操作習得が必須となります。
例えばデイジー企画の音声図書であれば、プレクストークなどの再生機器やパソコン、点訳データであれば、点字表示装置やパソコンなどの操作が必要となります。
また必要とする情報をリアルタイムに入手しようとすればパソコンのブラウザソフトの操作も必要です。
 しかし、こうしたICT機器の進歩に付いていけない視覚障碍者も多く存在しています。
 例えばデイジー再生機の操作習得ができない(しない)ため、相変わらずカセットテープ利用を続けていたり、また中には媒体変化についていけず、大好きだった読書をあきらめざるを得なかったと言う人もいるほどです。
こうした現状は利用できる人と、利用できない人との間に、大きな情報格差(digital divide)を生じさせています。
その結果、日常生活での便利さを享受できなかったり、社会参加の機会を逃がしたり、また時には経済的損失を生じる原因ともなっています。
  私の活動場面の中でも、多くの視覚障碍者から、ITサポートへのlove callが寄せられています。 今後も「IT社会に対応したボランティアの育成」に一層力を入れていかなければならないと思っています。

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